
「宮崎をどげんかせんといかん!」---。すっかりおなじみとなった東国原知事のキャッチフレーズだ。では、そのために、ITをどう活用していくのか。精力的にテレビ出演をこなして宮崎県のPRに務める一方、自らのサイトで日記を公開し続ける知事は、ネットというメディアをどう評価するのか。就任から5カ月、今も“旬の人”であり続ける東国原英夫 宮崎県知事に、宮崎県におけるIT活用について聞いた。 | ||
|
知事の顔写真や似顔絵は、県産品のパッケージは言うに及ばず、宮崎に関係するありとあらゆるところで目立っています。先日インターネットを見ていたら、ヤフーのサイトで知事の顔写真が大きく扱われていたのでびっくりしました。宮崎県がヤフーの公金収納サービスの第1号ユーザーとなったことにちなんで登場されたわけですが、「第1号になって目立とう」といった狙いもあったのですか?
![]() |
撮影:栗原 克己 |
そうですね。「宮崎モデル」「宮崎先導」「宮崎発祥」といったことが結構好きなんですよ。観光資源でいえば、宮崎は天孫降臨伝説、天の岩戸伝説もある日本の発祥地、日本人のDNAの源になるところですから。そういった意味もあり、これから宮崎が存在感を示すためには、「宮崎先導」「宮崎発祥」という事例は積極的に前に出していかなきゃいけないなと思っています。
2007年度から、ヤフーのシステムでインターネットを利用した自動車税のクレジットカード収納を全国に先駆けて開始しました。(知事就任前の)2006年度からの研究なので詳しい導入経緯は分からないのですが、「宮崎県がITの技術を最初に使った」ということは大切にしていきたいと思いました。
どうも宮崎県というのは、これまでは他県を見て自分の行動を決めていた部分があるので、「他県に先駆けて」というスタンスを採っていきたいなと思っています。
「宮崎ヒルズ」は難しいでしょうけど...
県の情報システム部門についても、「他県に先駆けて」というスタンスを期待しますか?
自動車税の取り組みについては、ヤフーさん側からの働き掛けもあったようですが、税務部門が積極的に食らい付いてくれたという話です。そうした姿勢は大切ではないでしょうか。そのほか、情報システムに関連して「全国初」であるとか「先進的」といった要素があれば、(それをアピールすることで)宮崎県への移住とか、観光とか、あるいは企業誘致にも資するのではないかと思っています。
今後、行財政改革を推進していくにあたって、どのようにITを活用していこうとお考えですか。宮崎県では今年度から総務事務センターを新設したことで、5年間で5億円のコスト削減効果を見込んでいますね。
総務事務センターによる総務事務の一元化は、財務会計システムや、人事給与オンラインシステムなどのIT化による効率化・集中化のメリットを生かしたものです。今後、出先機関における総務事務の一元化を検討していきます。また、総合文書管理システムや、全庁共有ファイル管理による業務の簡素・効率化について、職員への周知・研修を行っています。
IT産業の育成についてはどうですか。宮崎県からIT産業を作るといったことはお考えですか。
シリコンバレーみたいなものを宮崎県に作るとかですね、私がどこかで喋ったみたいなんですよ。夢だけは大きくてですね、六本木ヒルズならぬ宮崎ヒルズだとかって言っていたんです。ただ、行政のトップとしては、夢はあってもいいんですが、現実に即した内容でなければとお叱りを受けたことがありまして(苦笑)。IT企業については、産業振興の面からも誘致活動はしなければいけないとは思っていますが、「宮崎発のIT産業」となるとどうですかね・・・。
ただ、私の知り合いの方がですね---六本木ヒルズに住んでいるIT関係者なんですが---、なぜ六本木ヒルズにいるかというと、関係者が多いので、そこにいると情報交換や交流ができるからなんだそうです。ですから「一つの成功モデルを宮崎に移せば、だんだん日本だけじゃなくて世界からも人が集まってくるものなんだ」と、おっしゃっていました。シリコンバレーが出来た当初は何もないところだったわけですし、可能性はなきにしもあらず、ですね。
「ネットテレビ局」だって、テレビ局です
![]() |
動画インタビュー |
コミュニケーション・ツールとしてのIT活用については、どのようにお考えですか。知事ご自身もサイトで日記を更新し続けていますね。
県のホームページについては、2006年12月にトップページのリニューアルを行い、アクセシビリティの高いホームページづくりに努めています。また、行政手続、電子申請・届出、地域情報などの総合案内窓口として、県内市町村の協力により、県民生活ポータルサイトを運営しています。
双方向のコミュニケーションについてはどうですか。
以前は自分のホームページで掲示板を開設していたこともあったんです。そうしたら、今で言う「炎上」のような状態になってしまい、中止しました。
県のサイトでは、これはどこでもやっていることですが、県民メールを受け付けるようになっています。
知事の場合、タレント時代はテレビの仕事が多く、現在もテレビで取り上げられることで宮崎県が大きな話題となっています。やはりネットよりもテレビにメディアとしてのパワーをお感じですか。
でも、インターネットの世界が優勢になりつつありますし、これからは当然、ITとテレビとの融合というのは避けて通れないでしょうね。どっちが「食っていく」のかというと、やっぱりインターネットがテレビを食っていくんじゃないかという感じがしています。これからはパソコンでテレビを見る時代になっていくのではないでしょうか。その方が機能がいろいろ何倍もあって、自由度も広がりますしね。
そうなると地方が強みを発揮できるチャンスもあると思うんです。テレビの時代は放送局やプロダクションは東京集中でしたが、必ずしもそうでなくてもいい部分も出てくるのではないでしょうか。
ええ。私がマニフェストにお示しした「テレビ局の増設」というのは、あれは必ずしも地上波のことじゃないんです。なぜだか「地上波のテレビ局の開設」ということで伝わってしまいましたが、インターネット・テレビみたいなものをイメージしていたんです。ネットテレビの宮崎版の開局ですね。
視聴できる民放局の数が少ないという現実問題への対応としては、地上波の地方局を増やすのは非常に難しいので、ケーブル・テレビなどで対応するということになっているのですが、(その問題とは別に)「ネットテレビでもテレビ局なんだけどな」とは思っています。
|
(聞き手は、黒田 隆明=日経BPガバメントテクノロジー編集長、取材日:2007年6月7日)