台湾Mio Technology 全球行銷総監の劉宜君氏
台湾Mio Technology 全球行銷総監の劉宜君氏
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COMPUTEXのMioブースでは、本物のクルマを展示するなどしてPNDへの注力姿勢をアピールしていた
COMPUTEXのMioブースでは、本物のクルマを展示するなどしてPNDへの注力姿勢をアピールしていた
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Windows Mobile 6搭載のGPS内蔵スマートフォン「A702」
Windows Mobile 6搭載のGPS内蔵スマートフォン「A702」
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 台湾・台北市で開催された「COMPUTEX TAIPEI 2007」会場で最も目立っていた製品の1つがPND(personal navigation device)、いわゆる簡易カーナビである。PNDは欧米を中心に需要が急速に増え始めている。この市場への参入を目指して、PDAメーカーや車載機器メーカー、パソコンメーカーを始めとする20前後の出展社がPNDを会場で展示していた。

 地元・台湾のPND最大手である、台湾Mio Technology(宇達電通)でマーケティング責任者(全球行銷総監)を務める劉宜君氏に、PND市場の動向と同社の戦略について聞いた。

■PNDに参入しようとするメーカーが相次ぎ、多数の製品が出てきている。

 確かにこのところPND市場に参入するメーカーは多い。それはPNDの市場規模が年率数倍という規模で急成長していることを考えれば自然なことである。しかし、その中で強いPNDメーカーというのは、米Garmin International、蘭TomTom、台湾Mio Technologyの上位3社しかない。トップ3に入れないメーカーには、もはやチャンスはないと考えている。

 理由は2つある。まずは上位メーカーの市場占有率だ。Garminは北米でシェア5割、西欧でシェア2割。TomTomは逆に西欧でシェア5割、北米でシェア2割だ。Mioも北米、西欧それぞれで15%程度のシェアを取っている。

 もう1つはローカライズの問題だ。PNDはPDAなどと違い、製品を作りさえすれば世界中で売れるという種類のものではない。販売する地域に合わせてプリインストールする地図を調達し、各地の交通規則に沿った動作をするようナビゲーションソフトを改修し、各地のユーザーが操作しやすいユーザーインタフェースを実装する必要がある。

 新規参入メーカーでもハードウエアは開発できるだろうし、OSや地図は外部調達できる。ただ、それでも、ナビゲーションソフトを作り込み、それを各地のユーザーにとって使いやすいようローカライズするところまで含めた、トータルの開発力を持てるのは、現在上位を占めている3社だけだろう。たとえ(COMPUTEXでPNDを出品した)台湾ASUSTeK Computerや台湾Acerといった大手企業でも、こうした事情は同じだ。

■日本では、ビルトイン型のフル機能のカーナビが強い。

 当社としては、日本のカーナビメーカーを脅威とはとらえていない。確かに日本のカーナビメーカーは強い。高い技術力も持ち合わせている。しかし、彼らが自らの持っているナビゲーションソフトを海外向けに持って行き、的確にローカライズできるだろうか。ローカライズ戦略の的確さ、技術の緻密(ちみつ)さは我々の方が上を行くと考えている。

 また、PND市場は普及率が3~4割といったところで、これから急速に普及が進む段階にある。一方で日本のカーナビ市場は、既に普及率が高く成熟した市場で、今後の成長速度は遅くなると考えている。

■PNDと似た製品としてGPS内蔵スマートフォンがあるが、この市場をどう見ているか。

 まず、PNDとGPS内蔵スマートフォンはあくまで別の製品と考えている。PNDを購入する人は、乗車時のナビゲーション機能を使うことを主目的として購入する。GPS内蔵スマートフォンは、あくまで電話が主目的であって、GPSによるナビゲーションは付加目的の1つに過ぎない。製品に対するユーザーの振るまいが異なるので、両者の市場が混在するようなことはない。

 当社では、今後2~3年はPNDに注力し、その後はGPS内蔵スマートフォンの分野でも積極的に攻めていくつもりだ。先に述べたようにPNDの市場は、今が最も成長する時期である。GPS内蔵スマートフォンは、まだ市場が立ち上がったばかりであり、市場規模も普及率もわずかである。もう少し市場の興隆を待つ段階と考えている。

 とはいえ、GPS内蔵スマートフォンを軽視しているわけではない。当社はGPS内蔵スマートフォンを持っており、GarminやTomTomは持っていない。ここでGPS内蔵スマートフォンでも強くなれば、両社を抜いてナンバーワンになれる可能性があると考えている。

 今年はGPS内蔵スマートフォンで、Windows Mobile 6搭載の「A702」という製品を発売する。内蔵のカメラモジュールで写真を撮影する際、同時に内蔵のGPSモジュールで現在地を測位し、撮影地情報をExif形式で埋め込む機能を備えている。友人などに写真をメールで送る際、撮影した場所の情報も合わせて伝えることができる。また、米SiRF Technologyと共同開発した位置補正技術「Navsteadi」を実装した。ナビゲーション中にGPSの信号が弱くなった場合、推測航法を併用することで位置のずれを軽減するという技術だ。

■日本市場に向けた戦略は。

 日本市場への取り組みは、慎重に考えている。先に述べたように日本市場は既に成熟しており、ナビゲーション関連技術も既に確立している。当社としてはニッチ市場を開拓するしかないと考えている。現在、どのような潜在市場があるかを探っているところだ。

 具体的な製品としては、2007年8~9月をめどにPNDの新機種「C525」「C523」を発売する。4.3型横長液晶に、ワンセグチューナーを実装した製品だ。この戦略がうまくいけば、こうした路線を今後強化していくことになるだろう。