ソネットエンタテインメント(So-net)は5月16日,企業向けSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)のASPサービス「So-net SNS for Biz」を始めた。これまでコンシューマをターゲットとしてきたSNS構築サービスを法人展開したものだ。その特徴は,SNSの機能だけでなく,その運営ノウハウをも提供すること。サービスを取り仕切る会田容弘執行役員に,SNS法人展開の勝算を聞いた。(聞き手は高橋 秀和=日経コミュニケーション

企業向けSNSのASPサービスに参入する意図は。

写真●ソネットエンタテインメント 執行役員 会田容弘氏
写真●ソネットエンタテインメント 執行役員 会田容弘氏
 So-net SNS for Bizは,ソリューション提供を事業の柱に育てるための布石だ。これまでにも,通信インフラの提供に加えて,コンシューマ向けサービスの基盤を活用した企業向けASPサービスを展開してきた。これにコンサルティングを加え,ソリューション・プロバイダに生まれ変わる。

 ただ弊社はシステム・インテグレータではない。システム開発で真っ向から攻めるのではなく,SNSや共有カレンダーなど,いわゆるWeb 2.0的なコンシューマ向けサービスの法人市場を開拓する。そのための尖兵がSo-net SNS for Bizだ。

 SNSは法人の数だけニーズがある。SNSはあくまで機能であり,その上で何を実現するかというコンサルティングは欠かせない。そこにSo-netのノウハウをつぎ込む意義がある。

 SNSだけでなく,地図やカレンダーなどのサービスも順次,法人展開していく。一連のサービスのブランド名は「PRODUCTS」だ。これまでの成果の結晶という思いを込めて名付けた。今のところ,事業の柱であるインターネット接続事業,インターネット広告事業,ソリューション事業のうち,ソリューション事業の売り上げが占める割合は1割ほど。これを早い段階に2~3割にまで増やしたい。

運営ノウハウの提供とは,具体的にはどういった内容になるのか。

 サービス開始時点で持つノウハウは,So-net SNS for Bizの母体となった「So-net SNS」を通じて培ったものだ。So-net SNSは,個人ユーザーが運営者となってSNSを立ち上げられるサービスで,既に4000を超えるSNSが運営されている。そこで成功しているSNSを観察すると,ある共通項が見いだせる。So-net SNSはコンシューマ向けのサービスだが,コンシューマ,企業を問わず,人と人とのつながりを促進するという大きな目的は同じ。そこで得られたノウハウの有用性は,企業利用においても変わらない。

 一例を挙げると,場の盛り上げ方だ。社内SNSのように名簿が既にある環境でありがちなのは,利用者全員をあらかじめ登録してからスタートしてしまい,閑古鳥が鳴くケース。最初は登録メンバーで盛り上げ,頃合いを見て招待制に切り替えるという運営が比較的うまくいく。SNSである以上,つながりを持った形で場に参加する利用者によって活性化するという状況を維持するのが大事だ。コミュニティについても,最初から用意した方が良いものは決まっている。

 こうしたノウハウの提供は,SNS運営者の孤独感を癒やすことにつながる。試行錯誤は必要だが,運営者が一人で悩んでいるケースは少なくない。例えばSo-net SNSでは,運営者の交流を目的としたオーナーズSNSを提供している。当然,企業に対しても我々がノウハウを提供するだけでなく,運営者同士が交流できる仕掛けを提供していく。

なまじノウハウがあると,運営者がそれに頼るあまり“自社にとってのSNS”を探求する姿勢が甘くなるのではないか。

 出来上がったテンプレートを提供するのではなく,ユーザーと二人三脚でノウハウを運営に反映していく関係を想定している。そのためには,導入の段階で我々と運営者がSNSのゴールを共有するのが重要だ。先に「招待制が盛り上げのコツ」と話したが,目指すゴールによっては登録制の方が良いケースがある。

今後はSNS以外に,カレンダーや地図サービスを展開するという。それらサービスとSNSに蓄積したコンテンツを連携させる機能はあるのか。

 コンシューマ向けのサービスでは,ブログに地図を貼り込むなどの連携機能を追加し始めている。企業向けについても,連携用インタフェースの用意を進めている。So-net SNS for Bizのカスタマイズ対応メニューの中で連携機能を順次追加する予定だ。