米アドビシステムズの山本晶子氏
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アドビシステムズの小圷義之氏
アドビシステムズの小圷義之氏
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 アドビシステムズが廉価版のPDF作成ソフト「Acrobat Elements」の販売を終了することが、日経パソコンの取材で明らかになった(関連記事)。パッケージ版を発売してから一度もバージョンアップすることなく、期間にして約2年での販売終了となる。パッケージ版は在庫限り。サポートは最低でも1年は続けるという。

 販売終了に至った経緯と今後のAcrobatシリーズの製品展開について、米アドビシステムズのナレッジワーカー部の山本晶子シニアプロダクトマーケティングマネージャーと、アドビシステムズの小圷義之シニアフィールドマーケティングマネージャーに聞いた。

■販売終了に至った経緯を教えてほしい。

 Acrobat Elements(以下、Elements)は、2つの大きなミッションを持っていた。一つは「マーケットのトレンドを見る」こと。もう一つが「PDFを知らない人たちへの認知度を高める」ことである。この2つのミッションは達成できたと考えている。

 Elements発売当時と比べて、PDFを取り巻く環境は大きく変わっている。PDFを作るだけの時代から、活用する時代に移ってきたのだ。結果、作成だけを目的としたElementsは、時代にそぐわなくなってきた。実際、Elementsを購入した企業やユーザーのほとんどが、上位版のAcrobat Standardや同Professionalにアップグレードしている。

 Acrobatシリーズ全体の中で、Elementsが本数ベースで占める割合は微々たるもの。しかも先に述べたようにユーザーのほとんどが上位版にアップグレードした。これらのことを鑑みて、販売中止に踏み切った。

■Office 2007がPDF作成機能を搭載したことや、安いPDF作成ソフトの台頭が大きな影響を与えたのではないか。

 我々の主なターゲットは企業ユーザーだ。企業ユーザーのコミュニケーションツールとしてPDFを使ってもらいたい。

 「Acrobatブランド」は、企業ユーザーから高い信頼性を得ている。我々が行ったアンケート調査によると、多くの企業ユーザーが「社外に出すPDF書類はAcrobatで作成する」と回答している。他社のソフトは、基本的に企業でのPDF利用を想定しているとは思えない。我々が他社の動向や製品を意識する必要はない。

■今後、Elementsのような廉価版ソフトを開発する計画はないのか。

 全くないかと言われると、そのようなことはない。Acrobat Standardが廉価版という位置付けになる時代がくるかもしれないし、価格や機能面でElementsとStandardの中間に位置する製品を投入するかもしれない。現状では何とも言えない。