アクセンチュアはユーザーのシステムを預かって運用するアウトソーシング、業務そのものを請け負うビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)など、デリバリーのビジネスを世界にある40の拠点で提供している。同じモデルを推し進める競合との差異化や、今後の成長戦略について、ワールド・ワイドでデリバリーのビジネスを統括するルエダ氏に聞いた。
全世界の人材や設備を利用したデリバリーのビジネスはIBMも力を入れている。アクセンチュアのアドバンテージはどこにあるのか
まず言っておきたいのは、全世界に配置した人材や設備でサービスを提供するモデルを作ったのは我々だということ。IBMはあくまでも“追随者”だ。我々は20年前にフィリピン、スペインでは15年前、他社に先んじて取り組んできた。
IBMと大きく異なるのはデリバリー部隊の“育て方”だ。企業の買収ではなくアクセンチュアがスタッフを採用し、地道に育成をしてきている。現在、全世界で約6万人を抱えているが、内部で育成することで意思の統一とサービス品質の維持を実現した。
“ワールド・イズ・フラット”のデリバリー・モデルは、インドや中国の人件費が高騰する中、採算面で成り立つのか
確かに、インドや中国、フィリピンなどの新興国で取り組む理由の一つにロー・コストがある。しかしそれよりも重要なのが、優秀なスタッフの確保だ。人口が増えているそれらの国や地域では、より有能な人材を採用しやすい。日本や大陸ヨーロッパの国々では人口が減っていく。
デリバリーのビジネスを成長させる上で重要なポイントは
大きく3つある。1つが多言語への展開。これは特に多国籍企業や複数の国でサービスを展開している企業の要望が大きい。ある顧客は23の言語でサービスを利用している。今後はアジアでドイツ語やフランス語も扱えるようにする。これはいままで東欧諸国で取り組んできた。
次に事業継続計画(BCP)もユーザーの重要性が増している。我々は顧客に提供するアーキテクチャや、スタッフの技能を全世界で標準化しており、各センターで相互バックアップのシステムを構築しやすい。例えば、日本で災害が起こったら中国の大連で、さらにアジアで発生したら他の世界40カ所でサービスを継続する。
最後の3つめが、各国の規制に対応することだ。特に金融では要望が多い。銀行や証券の当局、中央銀行などが提示しているものがある。例えば、米国では証券取引委員会(SEC)が、企業の財務データの取り扱いについてシステム面で遵守すべき項目を決めている。
デリバリー・センターの増設など今後の方針について教えてほしい
投資を継続し、設備の増設や改善、人材の強化に取り組んでいく。特に顧客の業務を請け負うBPOでは新たな拠点を設けることを考えている。また、デリバリーに関わるスタッフは10万の人数規模を視野に入れている。
上流であるコンサルティングの段階から、デリバリーの部隊も関わらないと、顧客の要求を適切に実装できないのではないのか
その通りだ。コンサルティングのグループがソリューションを設計する段階になったら、当初からデリバリーの部隊がプロジェクトに関わることにしている。ソリューションにデリバリーの意見を反映させて、実際に提供できる現実的なサービスを構築するためだ。
「スマイル・カーブの法則」で、前工程であるコンサルティングと後工程であるデリバリーの収益性が高く、中間工程にあたるシステム構築は厳しいとの見方がある。今後、ビジネスの比重を変える可能性はあるのか
それはない。当社において、コンサルティング、システム構築、デリバリー、それぞれ3分野の持つ重要性は同じ。
例えば、こういうことだ。日本の製造業2社が企業を統合したとしよう。両者の製品や技術の良さを生かした新製品をいち早く市場に投入したいとしたら、その製品を製造するためのシステム構築が一番重要となる。
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