カナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)創業者で,現在も社長兼共同最高経営責任者を務めるMike Lazaridis氏。同氏は「BlackBerryは端末からサーバーまでを含むビジネス・ソリューション」と断言すると同時に,端末自身の機能や性能にも相当の自信を持つ。米フロリダ州オーランドで開催されたイベント「Wireless Enterprise Symposium 2007」の会場で,BlackBerryの日本での展開などについて話を聞いた。

(聞き手は武部健一原隆



BlackBerryの日本での取り組みやパートナについて教えてほしい。

リサーチ・イン・モーションのMike Lazaridis社長兼共同CEO。同社創業者でもある
 日本でのBlackBerryの発売は,NTTドコモとの長い協力関係を経てようやく実現できたものだ。ドコモとの関係は契約としては独占的ではないが,事実上は独占的な関係になっている。ドコモは製品の品質や性能に対して非常に厳しい要求を出してきたが,「BlackBerry 8707h」はドコモのネットワークでの承認を受けられた。

 現在はオムロンとも提携して,BlackBerryの日本語環境を強化している。日本語入力システムを含め,最高の日本語環境を作りたいと思っている。

昨年9月から日本での販売を始めたが,その感触は。

 多くの日本企業から引き合いをもらった。売り上げも非常に伸びており,日本での需要の大きさを実感している。

日本の携帯電話市場は特殊だと言われるが,この点は問題にならないか。

 確かに特殊な点はあるが,ビジネスでの要求は他の市場と似ている。具体的には,セキュリティが重要である点や,マイクロソフトの「Exchange」とIBMの「Lotus Notes/Domino」が使われ,それらへのインタフェースが重要である点などだ。特に銀行や保険会社などの金融関係が求める機能は,他の市場と同じ。ビジネスの基本的なインフラに求められるものは変わらないと思う。

日本では「サイボウズ」など,日本独自のグループウエアも人気がある。それらに対応する予定はあるのか。

 もちろん興味はあるし,サポートできればよいと考えている。ただ,現時点ではドコモやオムロンと協力して最高の日本語環境を作るのが第一だ。

 また,グローバル・ビジネスという点から考えると,どうしてもマイクロソフトやIBMの環境を重視することになるだろう。

ところでBlackBerryは“端末”なのか,それともBES(BlackBerry Enterprise Server)をセットにした“ソリューション”なのか。

 BlackBerryは,ビジネス・ソリューションととらえてもらいたい。端末であり,サーバーであり,ネットワークであり,ツールであり,すべてを取りそろえているソリューションだ。

ソリューションということであれば,Symbianのようにソフトウエアに特化するビジネスモデルもあるだろう。端末のハードウエア開発にこだわる理由は何か。

一見,エリート・ビジネスパーソン風に見えるLazaridis氏だが,インタビュー中もずっとBlackBerryを“いじっている”ほどのガジェット好き
 
 我々は,この業界のパイオニアであると自負している。小さなキーボードや高解像度のディスプレイなど,多くのものを発明してきた。BlackBerryを実現するには,すべてを自社で発明する必要があったのだ。

 そして,我々は現在でもパイオニアであると認識している。今後もイノベーションのチャンスがたくさんあるだろう。これが端末開発にこだわる理由だ。(ソフトウエアでBlackBerryの環境を実現する)「BBConnect」や「バーチャルBlackBerry」を提供していても,BlackBerry端末は十分に競争力を保てると考えている。

売り上げに占める端末ビジネスの割合は。

 70%だ。残りの30%はサーバーとサービスのビジネスになる。

最近はコンシューマ向けの端末にも力を入れている。その理由を教えてほしい。

 BlackBerryは800万人の利用者がいる。ビジネスパーソンが中心だが,彼/彼女らは同時にコンシューマでもある。利用者からカメラの機能が欲しいといったいろいろなニーズが出てきたので,我々はそれに応えた。

 日本では,まずは3G(第3世代携帯電話)タイプの端末に力を入れていきたい。ただ,将来的には(コンシューマ向け製品の)「BlackBerry Pearl」も発売したいと思っている。