本連載では、電子マネーの活用に積極的に取り組んでいるいくつかの企業に、これまでの手ごたえや今後の取り組みなどを聞く。第4回は、nanacoを始めたセブン&アイ・ホールディングス

 

自社発行の電子マネー・サービス「nanaco」が4月23日からいよいよ始まりました。すでに10日からはインターネット経由での予約を受け付けていますが、これまでの手ごたえはいかがですか。

セブン&アイ・ホールディングス 佐藤政行執行役員(以下、佐藤氏)
 実数は言えませんが、消費者からはよい手ごたえを感じています。加えて、加盟店からの反応もいいと感じた出来事が二つありました。一つは、サービス開始に向けて、都内の1500店舗を対象にnanacoカードの特別発注を受け付けましたが、ほとんどの店舗が上限の400枚を発注したことです。一部では「足りないのではないか」という声も上がっています。
 もう一つが、数週間前に開催した商品展示会での関心度の高さです。ビックサイトで開催した同イベントには東京近郊の店舗オーナーが集まりました。会場には、nanacoの解説コーナーが300席くらい用意し1日に10数回説明会を実施しましたが、常に9割くらいが埋まった状態でした。みなさん、熱心に耳を傾けていたのが印象的でした。

店舗オーナーからはどのような声が聞こえていますか。

佐藤氏 nanacoでは、電子マネー発行企業に対して支払う手数料など店舗への負担が生じません。運営費用はセブン&アイ・ホールディングス本体が負担しますから、「持ち出しがない」と好評です。

nanacoに対して、どのような効果を見込んでいますか。

佐藤氏 まずは精算時間の短縮です。首都圏の店舗では、1日あたりの来店者数が4000を超えるところもあります。お昼時には長い行列ができてしまいますから、1人当たりの精算時間を短縮できれば大きな効果が見込めます。2007年3月26日に完成した当社の第6次システムで新型POSを導入、レシートの印字速度を従来の150mm/秒から270mm/秒に上げたところ、客数が大きく増えたところもあります。これまでは長い列を見てあきらめていたユーザーを取り込めたのでしょう。nanacoの導入で、もっと大きな効果を見込めます。

以前の会見では、顧客との関係を強化して商品開発にも役立てたいというお話がありました。

佐藤氏 商品開発につなげるには、ある程度の母数が必要です。マーケティング・データとして活用できるには、少なくとも20%くらいの利用率がないといけないと考えています。従来の電子マネーの利用比率は1~2%程度とみていますが、nanacoでは大きく変わるだろうと思います。その根拠は、加盟店が熱心なことと魅力的なポイント・プログラムの導入です。

大手コンビニエンス・ストアとしては、電子マネーへの対応が遅れているという印象があります。なぜ、このタイミングでのサービス開始となったのでしょうか。

佐藤氏 nanacoの導入は、第6次システムのサービスの一部に組み入れたものです。3年前の構想では2007年春からPOSレジの入れ替えを始め、秋には終了する予定でした。しかし、2年前くらいから「Edy」や「Suica」の利用が広がったのをみて前倒しすることにしました。複数の電子マネーを利用できるようにするためにマルチリーダー/ライターが必要となりましたが、メーカーの協力を得てほぼオン・スケジュールで進められました。