複数のWebサービスを呼び出し、組み合わせて利用する“マッシュアップ”。米オラクルでWebアプリケーション・サーバーの開発を担当するアミット・ザベリー副社長は、企業向けアプリケーションの世界で、マッシュアップが重要だと話す。(聞き手は岡本 藍)。
企業のシステム開発におけるマッシュアップの重要性を説明してほしい。
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写真●米オラクル アミット・ザベリー副社長 |
企業のシステム開発を容易にすることができるからだ。業務要件やユーザーの要望を、これまでに比べてずっとシンプルな方法で実現できるようになる。まだマッシュアップは、一般消費者向けのWebサイトの技術だと思われがちだが、企業の業務システムの開発にも間違いなく有用なものだ。
既に多くの企業は、機能単位にサービス化し、これを組み合わせ、業務プロセスを実現していくSOA(サービス指向アーキテクチャ)の重要性に気付き始めた。実際、SOAの考え方を取り入れたシステムの開発も急速に増えている。
SOAとマッシュアップに関連
SOAを採用した開発には、マッシュアップと共通する面がある。SOAでシステムを開発する場合、サービスそのものを社内で開発するだけでなく、外部のサービスを利用することもあるからだ。いずれの場合にしても、複数のサービスを組み合わせるという面で変わりはない。
我々はこれを「エンタープライズ・マッシュアップ」と名付けている。同様の考えを「コンポジット・アプリケーション」と呼ぶケースもある。
組み合わせることによるメリットはほかにもあるのか。
マッシュアップは、業務アプリケーションのユーザー・インタフェース(UI)を考えるうえでも有効だ。マッシュアップの手法を取り入れ、画面を構成する部品を組み合わせて開発できれば、操作性の高い画面を簡単に作成できるようになる。
従来のシステム開発では、画面ごとにプログラミングをする必要があった。業務の変化に応じて、サービスを組み替えて業務プロセスを実装しても、画面の開発が困難であればそのメリットは半減する。
いつごろ、エンタープライズ・マッシュアップの世界が到来すると考えているか。
2~3年先のことになるだろう。エンタープライズ・マッシュアップを進める際には、社内にどんなシステムがあるのかを整理しながら進める必要がある。
日米を問わず、企業にはさまざまなシステムが混在している。メインフレーム上で動作するプログラムから、ERPパッケージ(統合業務パッケージ)を利用した業務アプリケーション、Webシステムもある。こうした状況は30年~40年かけて出来上がってきた。これらの関係を解きほぐすのは簡単ではない。
当初は小さくスタートして、少しずつ複数のサービスを組み合わせていくことになるだろう。
それからエンタープライズ・マッシュアップやSOAに取り組むとき、多くの企業では、同時にBPRを実行する必要がある。業務プロセスの見直しにはある程度の時間が必要だ。
標準技術の採用が重要
エンタープライズ・マッシュアップの成功には何が重要なのか。
1つは標準の技術を利用することだろう。例えば、サービスを組み合わせてアプリケーションを開発するとき、BPEL(ビジネス・プロセス実行言語)を利用すれば、異機種混在の環境で異なるベンダーのサービスを利用しても、同様の業務プロセスとして設計・実行できる。独自技術にこだわっていてはこれは無理だ。
ミドルウエアにとって、標準技術は最も重要な要素である。我々もWebアプリケーション・サーバーをはじめとするミドルウエアを開発する際、徹底的に標準技術にはこだわっている。これが他社との大きな違いだ。
例えば、マッシュアップに基づいたUIを実現するために、我々が提供している製品の「WebCenter Suite」の場合、ポータル画面に組み込むポートレットの標準仕様「JSR-168」に準拠している。加えて、オープンソースのコンテンツ管理システムであるWikiを取り入れたり、RSSに準拠したりしている。
オラクルは、顧客のニーズに応じることができるよう、積極的な企業買収を通じてミドルウエア群を拡張してきた。元々は異なるベンダーの製品であっても、当社の製品として短期間に統合していくことができるのも標準にこだわっているからだ。