米サン・マイクロシステムズの業績が復活してきた。2006年10~12月期は、04年4~6月期から数えて1年3カ月ぶりに黒字回復し、純利益は1億2600万ドルに達した。調査会社の米IDCによれば、06年の4四半期を通してサンはサーバー市場のシェアを前年同期比で拡大し続けたという。
ドットコム・バブル崩壊以降、業績にあえいできた同社が復活したカギを、日本法人会長のダン・ミラー氏は「バランス」と「イノベーション」と話す。米本社では、サーバー製品とサーバー・アプリケーション製品を担当する上級副社長を務めるミラー会長は、イノベーションの例として同社の新しいデータセンター製品「Project Blackbox」にも言及した。
ここにきて業績が復活した理由は?
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サン・マイクロシステムズ日本法人のダン・ミラー代表取締役会長。米コロラド州出身の43歳。1988年に米サン・マイクロシステムズに入社。グローバル・サービスプロバイダー・ストラテジーグループ担当副社長などを歴任し、03年7月に日本法人社長に就任。06年4月から現職。 |
RISCプロセサのSPARCは複雑なアプリケーションには最適と考えているが、Webやポータルといったネットワークのエッジ部分に存在するアプリケーションでは、米アドバンスト・マイクロデバイセズ(AMD)や米インテルのプロセサの方が適している。そうであるなら、両社と協業した方が良いと判断した。その意味で富士通や日立製作所とも協業している。
OSに関しては、ビジネスがうまく行っていなかった5年前も現在も、当社のSolarisこそが基幹システムを支えるのに最適だと考えている。その証拠にSolarisは、NTTドコモや官公庁の多くで稼働している。最近、変わったのはSolarisをオープン化したことだ。これで昔は高くて手に入れることのできなかった学生や起業したばかりの会社でも導入できるようになった。
AMDやインテルと協業するのは、独自開発を縮小していくということか。
そうではない。他社との協業を進めても、自社のイノベーションを縮小することはない。この点はハッキリと申し上げたい。当社は09年に利益率10%を目指している。この目標を達成する唯一の方法はイノベーションだ。
イノベーションに対する投資はこれまでと同様、エンタープライズの領域に限定する。エンタープライズからコモディティやサービスに戦略をシフトした米ヒューレット・パッカード(HP)とは正反対に、我々はエンタープライズに注力し続ける。
BlackboxはHPやデルには作れない
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「Blackboxこそイノベーションの具現化」と語るミラー会長は、米本社でサーバー製品とサーバー・ソフトウエア製品のビジネスも担当する。 |
主な構成要素は、(1)ネットワークをつなげ、仮想化機構や障害の自己診断機能などを備えるSolaris、(2)消費電力を抑えたUltraSPARC T1プロセサを搭載したサーバー機、(3)データセンター・ビジネスでこれまで伝統的に培ってきた、多くのシステムをつなげるためのネットワーク技術である。こうしたものを少しづつ進化させたものがBlackboxだ。決してコンテナの中にパソコンを詰め込んだだけでは実現できず、HPや米デルでは作れない製品だろう。
いつ出荷するのか?
まもなく公式に発表する。Blackboxにより、ユーザーの突発的なデータセンター需要に柔軟に対応できると考えている。日本は港湾地域が多いので利用も適しているだろう。
イノベーションを続けることを先ほど話したが、ITにおける革新はまだまだ余地も機会もたくさんある。人によっては「すべての革新は起こってしまった」と言うが私はそうは思わない。これから何十年にもわたって続くだろう。
外部との提携によるイノベーションでいえば、富士通を共同開発している、SPARC/Solarisベースの新サーバー「APL(アドバンスト・プロダクト・ライン)」の出荷が遅れている。
もちろん遅れなければそれに越したことはないが、ミッション・クリティカルの業務で使われるコンピュータを開発するときは、最高の品質を市場に提供するためにあえて遅れを選択することもある。
なぜ遅れたのか。
いくつかのエンジニアリング上の問題が発生したためだ。
いつ出荷するのか。
まもなく発表する(本誌注:本日午後1時に発表する予定で、追って報道する)。
先日、富士通の黒川博昭社長にインタビューしたところ、今後富士通は製品数を現在の3分の1程度に絞り込むと言っていた。その中でサンとの提携を見直すということも考えられる。サンとしては今後富士通とどのようにアライアンスを組んでいくのか。
富士通の戦略変化は存じ上げないが、提供製品のポートフォリオを絞ることは驚きではないし、良いことだとも思う。アライアンスに関して我々が言えることは、04年6月に発表したアライアンスの内容通りにハイエンド、ミッドエンド、ローエンドの製品を開発出荷していくということだ。