本連載では、電子マネーの活用に積極的に取り組んでいるいくつかの企業に、これまでの手ごたえの感触や今後の取り組みの方向性などを聞く。日本マクドナルド、ビットワレットに続く第3回は、電子マネーの取り込みにいち早く取り組んできた全日本空輸(ANA)。

 

ANAのマイレージ会員向けに、電子マネー「Edy」との交換サービスを始めたのが2003年です。電子マネーにいち早く着目した背景を教えてください。

全日本空輸(ANA) 営業推進本部 顧客マーケティング部 吉村裕子アシスタントマネージャー (以下、吉村氏) Edyとの連携を発表した当時は、JALとJASが統合したタイミングであり、顧客の獲得競争がますます激しくなっていたころでした。顧客の囲い込みが必要だったという事情があったわけです。そこで、電子マネー機能を取り込んで会員カードを日常的に使ってもらうことにより、「メイン・カード」になれると考えました。Edyには地域的な制約がなかったのも、全国でサービスしている当社には好条件でした。

 ただし、当初は使える場所が少なかったので、Edy利用店舗の開拓で支援しました。それなりに苦労もありましたが、地域の商店街などに人的なつながりもできて、当社としてもそれなりにメリットもありました。

 現在、電子マネー・サービスは、搭乗に応じてポイント獲得できるマイレージ・プログラムに準じたものと位置づけています。将来の搭乗への誘導、さらには航空サービス向上につながるCRM(顧客関係管理)のツールになります。航空会社へのポイント換算率は、1ポイントあたり5円と高い水準です。電子マネー発行者側にもメリットがあると思います。

ANAマイレージクラブの会員数は1500万を超えています。CRMツールとして、どのような生かし方が考えられますか。

吉村氏 これだけの数になったことで、例えば買い物の利用額と国際線搭乗の関係など、搭乗情報(クラスや地域)だけでなくさまざまな仮定をたてて検証できるようになりました。会員数が2000万を超えるところは国内では10ブランド程度しかありません。2000万にはもう少しですが、当社の大きな財産になっています。

会員数の増加に合わせた会員管理システムの増強は。

吉村氏 マイレージ会員管理システム「Minds」は、2004年にデータベース容量を増やすタイミングでバージョンアップしました。詳細は未定ですが、2008年にはさらに1000万くらい増えてもいいように容量を増やす予定です。

2007年はどのような年になりますか。

吉村氏  会員数は順調に増えています。電子マネーという点では、Edyを使わない層にもリーチできる年になります。首都圏の交通機関で利用できる「PASMO」や、セブン&アイ・グループの「nanaco」なども選択肢になり、より日常的に使ってもらえるようになると期待しています。

 新幹線との競争において、チケットの電子化による搭乗時間の短縮をアピールする年でもあります。電子チケットによって搭乗手続きを簡略化した「スキップサービス」が利用できる空港も36空港に増えます。

 獲得ポイントの交換先を増やすことで、カードの発行コストが抑えられるというメリットもあります。自社カードを発行しなくてもANAの搭乗者が増えるという好循環を期待しています。


(聞き手は菊池 隆裕=日経コンピュータ)


 新段階に突入した電子マネーに関する記事「拡大期に入った少額電子決済」は、『日経コンピュータ』4月2日号でお読みいただけます。