本連載では、電子マネーの活用に積極的に取り組んでいるいくつかの企業に、これまでの手ごたえや今後の取り組みなどを聞く。第2回は、電子マネー・サービス「Edy」を2001年から始めているビットワレット。

 

ここにきて、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco(ナナコ)」など、新しい電子マネー・サービスが相次いでいます。

ビットワレット 執行役員常務 宮沢和正 事業戦略本部長 業務本部長(以下、宮沢氏)
 参入意思を示したところが出揃ったということで、大いに盛り上がってきました。ライバルは増えましたが、それだけ認知度が高まると期待しています。当社は、サービスを先行して始めたわけですから、常に先を行きたいと考えています。

具体的にはどのようなことを考えられていますか。

宮沢氏 次は、パソコンや携帯電話からのインターネット決済でも電子マネーが使えるようになる「イエナカ」です。他社が「駅ナカ」や「街ナカ」といっていますが、イエナカができることによって、いつでも電子マネーが使えるようになります。2007年は「いつでも」の元年になると考えています。

 インテルやマイクロソフトと共同で取り組み始めた「スマートデジタルライフ推進プロジェクト」は、今では参加企業が68社に増えました。これは、非接触ICカードを使った、パソコンや携帯機器の利用時における個人認証や決済を推進しようというものです。ICカードのリーダー/ライター機能を持つパソコンは増え続けていますし、対応Webサイトも増やしていきます。

インターネットの電子決済ではクレジット・カードなども使えますが、ほかの決済手段とは何が違いますか。

宮沢氏 セキュリティ面を気にしてクレジット・カードを敬遠する層に「簡単」「安全」「便利」を訴えます。非接触ICカードは匿名性があるので、個人情報の流出リスクが小さくなります。

 インターネット上の個人消費は全体の数%程度とまだまだ小さいのですが、伸び率は前年比3倍くらいで伸びしろが大きいと思っています。そこで始めたサービスが「Edyショッピングサーチ」です。商品名やメーカー名などを入力すると、Edyで購入できる商品を表示するというものです。エンジンは、コマースリンクが提供する「ショッピングサーチ・アラジン」を使っており、今のところ100万件の商品を扱います。

サイバーではなく、実社会の店舗はどうでしょう。

宮沢氏 コンビニエンス・ストアやスーパー・マーケット、ドラックストア、ホームセンター、家電量販店を押さえるという戦略を進めています。特にコンビニエンス・ストアでは、セブン-イレブン以外の上位10社では使えるようになっています。

他社のサービスでは、個人情報をもらってCRM(顧客関係管理)に生かそうという動きも見られます。一方、プラスチックカードのEdyは基本的に匿名です。

宮沢氏 決済時に分かるのはEdy固有の番号だけですが、それでも「見える」ものがあります。よく利用してくれる人にはこの番号を元にEdyポイントを提供します。さらに詳しい個人情報まで知りたい場合には、パートナー企業が直接エンドユーザーに対して働きかけ、了解を得た上で取得することになります。スーパー・マーケットなどは、購買金額に応じて割引率を設定するなどうまく活用しているようです。ゲーム・センターを運営するセガや、オンライン・カラオケを提供する第一興商では、個人認証手段としても使っています。獲得ポイントに応じて、全国ランキングを表示するようなサービスを提供します。

今後の取り組みを教えてください。

宮沢氏 抽象的ですが、ライフスタイルを変えたいと思っています。便利に、安全に、いつでもどこでも決済できる環境を整えます。企業業績としては、黒字化が目標です。2008年くらいには黒字化したいと思っています。郵貯カードにEdyを載せることになりました。郵貯カードの発行枚数は7000万枚くらいあります。国民の1/2くらいが使う潜在性を持っているわけで、大いに期待しています。

(聞き手は菊池 隆裕=日経コンピュータ)


 新段階に突入した電子マネーに関する記事「拡大期に入った少額電子決済」は、『日経コンピュータ』4月2日号でお読みいただけます。