「金融業=IT装置産業」。この言葉通り、金融業においてIT活用の巧拙は、競争力に直結する。例えばインターネットバンキング、電子マネーなど、新たなニーズに応えるシステムを迅速に整備しつつ、セキュリティや内部統制のような“守り”の体制を確実に実施しなければならない。一方で特にメガバンクのITは社会インフラであり、確実かつ正確な運用が必須だ。日本最大のメガバンクである三菱東京UFJ銀行は、変化し続ける環境の中で、様々なIT化にどう対応しようとしているのか。CIOを務める原沢隆三郎氏に聞いた。(インタビュアー=日経BP 金融ITイノベーション編集長 田口 潤)

原沢 隆三郎氏
原沢 隆三郎氏

三菱東京UFJ銀行は2006年1月、東京三菱銀行とUFJ銀行が合併し、総資産約160兆円、預金総額約100兆円、顧客基盤約2000万口座(06年1月現在)のメガバンクとして誕生した。今、旧2行のシステム統合の真っ最中だが、現状は?

 システムの統合は「Day1」「Day2」という2段階で進めている。2行のシステムを残した上で相互接続する「Day1」は、06年1月に無事リリースした。大きな不具合もなく今に至っている。現在は、2行のシステムを完全に統合する「Day2」の途上だ。09年5月リリースに向け、全力で取り組んでいる。具体的に説明すると、06年5月までにDay2で作るシステムの企画やプロジェクト計画を終えた。お客様から見たサービスと、銀行内部から見た機能という点の双方で、やるべきことはすべて注ぎ込めたと見ている。今年の9月までに「モノづくり」を終える予定で、その後は徹底的なテストを行っていく。

システム統合の着手から完了までに要する人的・期間的投資の規模はどの程度か。

 「Day1」が1年半、「Day2」は終了まで3年を予定しており、トータルで4年半かかる計算になる。関係する人員はピーク時で合計8000人。内訳は、おおまかに当行のシステム担当者が1000人、子会社が1000人、われわれが「パートナー」と呼んでいる協力会社の方が6000人となっている。

これだけ大規模なシステムを運営していくだけでも相当の投資が必要だと想像できるが、具体的にITにどれほどの投資を行っているのか?

 システムへの年間投資額は、経費ベースで年間約2000億円。与えられた課題の中で最初にコスト削減は行うが、課題が大きくなれば、その分投資額も大きくなる。当行の規模やサービスの多様性などを考えれば妥当な線だろう。