米3PARdataは,キャパシティ・プランニング(容量設計)が不要なストレージ「InServ Storage Server」を出荷するストレージ・ベンダーである。あらかじめ余分なストレージを確保しておく必要がないため,電力を低減できるメリットがある。同社でマーケティング副社長を務めるCraig Nunes氏に,ストレージに求められている機能を聞いた。



キャパシティ・プランニングが不要になる理由とは?


米3PARdataマーケティングVice PresidentのCraig Nunes氏(右)と,日本法人の3PARdata代表取締役社長の加藤賢造氏(左)
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 ストレージの容量設計では,データ量の増加などに合わせて,あらかじめ余裕をもって容量を余分に確保しておくのが一般的。従来は,業務アプリケーションごとに独立してストレージ・ボリュームを割り当ててきた。結果として,業務アプリケーションの数が増えれば,使っていないストレージ容量も増えるというわけだ。平均的なユーザー企業では,確保したストレージ容量の75%は使われていない。

 これに対して米3PARdataは,Thin Provisioning(シン・プロビジョニング)と呼ぶ方法でストレージを仮想化してストレージの利用効率を高める。具体的には,Chunklet(チャンクレット)と呼ぶ容量256Mバイトの小さな単位でディスクを管理する。業務アプリケーションのために確保するストレージ・ボリュームは,このChunkletの集合体となる。例えば,容量500Gバイトの仮想ボリュームは2000個のChunkletで構成する。

 ボリュームは仮想化されているため,Chunkletの追加によって容量を増やすことが可能だ。未使用のChunkletをプールしておき,あるボリュームの容量を増やす必要が生じた時に,未使用のChunkletを割り当てて容量を増やすのだ。未使用のChunkletはどのボリュームにでも化けることができるため,あらかじめボリュームごとに容量設計する必要がなくなる。ボリューム容量の追加も自動的に行われる。ユーザーは未使用のChunkletが少なくなった時点でディスクを継ぎ足すだけでいい。

 未使用のChunkletを全ボリュームで共有できるため,余分に用意しておくディスクも少なくて済む。実際に,米3PARdataのユーザー企業は,他社のストレージを使った場合と比べてストレージ容量の60%を節約できている。

ディスク容量の削減はCO2抑制にどのくらいの効果があるのか。

 米3PARdataの企業メッセージは,CO2(二酸化炭素)の削減によるグリーン(緑)・ストレージだ。経験則だが,容量1Tバイトのディスク・ストレージは,年間1トンのCO2に相当する。別の産業と比べると,自動車は年間5トンのCO2に相当するので,自動車1台はストレージにして5Tバイトに当たる。米3PARdataのストレージは容量の60%を節約できるため,100Tバイトを40Tバイトに削減すれば,年間で60トンのCO2を削減することになる。

 これに加えて,米3PARdataは,CO2削減を掲げる企業のブランディング・メッセージとして,カーボン・オフセット(CO2を排出する権利)を自動車のコンシューマなどに売るベンダーである米TerraPassとパートナ・シップを結んだ。カーボン・オフセットの購入代金は,CO2の削減のために使われ,自動車1台のカーボン・オフセットは1年間で50ドル(約6000円)である。米3PARdataでは,年間で約5万ドル(約600万円)分のカーボン・オフセットを購入している。ストレージに換算すると約5000Tバイト分になる。

CO2排出量という切り口で地球環境に関心を持つ企業は多いのか。

 日本で実施したユーザー企業の実態調査では,上場企業に従事する従業員のうち23%がCO2の削減に取り組んだことがあると答えている。この数値は米国での調査よりもはるかに大きい。日本は仮想化によるユーティリティ・コンピューティングによって有望な市場だ。

 なお,このユーザー調査レポートは,近日中に詳細を報告できるはずだ。内容は大変興味深いものとなっている。

最近のトピックを教えて欲しい。

 災害対策用の遠隔バックアップ・ソフト「3PAR Remote Copy」とWAN高速化装置を組み合わせて使うユーザーが増えている。米3PARdataの金融系のユーザー企業で多いパターンが,米Riverbed TechnorogyのWAN高速化装置「Steelhead」との組み合わせだ。こうした先行ユーザーからの声を聞き入れる形で,米国では米Riverbed Technorogyとの間でパートナ・シップを結んだ。

 両社は技術面とサポート面で協力関係にあるが,販売面での提携はない。米3PARdataの販売代理店はネットワンシステムズと日商エレクトロニクスであり,米Riverbed Technorogyの販売代理店は,ネットマークスと日本ダイレックスだ。国内でも,技術サポート面で協力体制が取れれば良いと思っている。

■変更履歴
日本のユーザー企業調査の数値で,CO2の削減に取り組んだことがある率に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。
[2007/03/27 21:47]