大阪府箕面市長 藤沢 純一氏
大阪府箕面市長 藤沢 純一氏
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いわゆる“住基ネット訴訟”において、原告の住民票コード削除を命じた大阪高等裁判所の判決が、大阪府箕面市において確定したのが昨年12月15日。判決は拒否する者にコードを付けるのは違憲・無効という趣旨であった。箕面市は今後、原告(1人)の住民票コード削除を行わなくてはならない。同市では4人の有識者検討専門員による4回の合議を経て、3月30日に専門員による見解が発表される予定だ。この藤沢市長へのインタビューは2回目の専門員合議の後の2月13日に行ったもの。判決を受け入れた経緯、今後の対策について伺った。
(聞き手:黒田 隆明=編集長 写真:塩川 真悟)


まず、最高裁の判断を仰ぐべきだ、という意見も多かったと思います。これについては市長も様々な場所でコメントされていますが、あらためてお考えをお聞かせください。

藤沢 箕面市は「人権のまち」という一つの基本的な柱を持っていますので(注1)、その観点に立って判断したということです。市民の人権を守る、そして団体自治を貫くという立場で、総合的に判断した結果です。

(注1)1993年12月22日に「箕面市人権宣言」採択、2003年3月31日に「箕面市人権のまち条例」公布。

 国においても、小泉前首相はハンセン病患者訴訟の敗訴判決(2001年5月、熊本地裁)が出たときに控訴をしなかったということもあるわけです。それぞれの自治体の首長として、その自治体の立場に立って判断すべきだと思っています。

大阪高裁判決の確定を受けて、箕面市として現在どのような対応を進めているのかを教えてください。

藤沢 高裁判決が確定しましたので、原告1人の分の住民票コード削除については合法性があるわけです。ですから、まずその削除方法について検討しています。

 もう一つ、今後住民票コード削除を希望される方が当然出てくることが予想されます。その場合の実現可能性を、法的な側面、技術的な側面から検討しています。昨年12月末に有識者4人(注2)による「検討専門員」を設置して検討を進めてもらっています。委員の皆さんにはこの3月末までに結論を出してほしいとお願いしているところです。

(注2)正確には箕面市住民基本台帳ネットワークシステム検討専門員。園田寿甲南大大学院教授、秋田仁志弁護士、黒田充自治体情報政策研究所代表、江沢義典関西大教授の4人。

住民票コードのデータ削除を希望する市民が出てきた場合、対応はどのようにしたいとお考えですか。

藤沢 そうですね。“思い”がおありの方がおられるのであれば、それに沿える方がベターでしょうね。

法的、技術的な問題は別として、原則論としては、住民票コードを削除してほしいという住民がいた場合、現時点では「認めるべきだ」というのが、市長のお考えだ、ということでよいでしょうか。

藤沢 そのように解釈していただいて結構です。

その一方、「同様の訴えがあれば、市としては応訴する」という市長の発言が報道されています。

藤沢 「市として検討して結論を出す」と申し上げていますので、それを待っていただきたい、ということです。市の結論を待たずに今、訴えを起こすというのは“ためにする”意図ではないのか、という意味です(注3)

(注3)インタビュー後の3月5日、市民8人が、市個人情報保護条例に基づき住民票コードの削除を求める請求書を市に提出。市は30日以内に判断して書面で通知する。