NTTドコモとルネサス テクノロジ,富士通,三菱電機,シャープ,ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの6社は,HSDPA(high speed downlink packet access)など高速通信に対応した第3世代携帯電話(3G)プラットフォームの共同開発に着手した。2008年度第2四半期をめどに開発を進め,第4四半期以降に新プラットフォームを搭載した携帯電話機が市場に投入される見通しだ。開発中のプラットフォームについて,NTTドコモ移動機開発部長の三木俊雄理事に話を聞いた。

(聞き手は中井 奨=日経コミュニケーション



プラットフォームを共同開発した経緯は。


NTTドコモ移動機開発部長の三木俊雄理事
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 1チップのプラットフォーム自体は約2年前から共同開発しており,今回の3G携帯電話プラットフォームは3世代目に当たる。第1,2世代のプラットフォームの開発が成功したので,共同開発を継続しているというわけだ。今回から新たにソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズが加わり6社体制となった。

 プラットフォームの共同開発は,オープンな取り組みだ。共同開発には各ベンダーが自らの意思で参加しているし,今後プラットフォームを採用したいというベンダーにもオープンに対応していく。

開発中のプラットフォームの特徴は。

 プラットフォームは単なるICチップだけではなく,通信にかかわる部分とアプリケーションにかかわる部分とで構成されている。元々は,この二つは別々のチップだったが,これを一つのチップにしている。その上にOSと共通のアプリケーションをサポートするミドルウエアが搭載されている。

 開発中のプラットフォームでは,通信の高速化に対応するためにHSDPAの標準規格を搭載する。また,従来よりもマルチメディアやアプリケーションの機能をサポートする部分を充実させる計画だ。共通部分であるミドルウエアの上にベンダー独自のアプリケーションが搭載される。このほかにも共通化できる機能がないかどうかを,今後6社で協議していく。

プラットフォーム共同開発のメリットは何か。

 携帯電話の開発期間短縮やコスト削減を実現できることだ。ベンダー各社の携帯電話の開発規模が大きくなり,コストと開発期間が膨れ上がってきた。そこで各社は,アプリケーションやデバイスの開発では競争するが,プラットフォームは共同で開発しようという流れになった。

 ユーザーにとってのメリットも大きい。現在のHSDPA対応の携帯電話機は,HSDPA用に別のチップを搭載しなければならないため,その分サイズが大きくなるし,値段も高くなりがちだ。それに対して,プラットフォームを使用すれば端末の小型化が進む上に,ユーザーはより手ごろな値段で端末を購入できるようになる。また,1チップなので消費電力も下がり電池が長持ちすることも考えられる。

海外で展開する計画は。

 開発中のプラットフォームは,NTTドコモだけの仕様に特化していない汎用的なものだ。NTTドコモと同じW-CDMA方式を採用する通信事業者も増えており,プラットフォームを搭載した製品が世界でも売れるようになることを期待している。