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続・IP電話の夜明け前(16)IP化こそが高音質電話へのチャンス(2002年秋)
ブロードバンドが普及したことにより,コミュニケーションの質が変わってきたことを感じ始めた。そして,新たな道へのヒントが見えてきた。 通信事業者向けの宅内装置の開発のめどが付いた2002年秋のことだ。ネットワークがフルIP化し、ブロードバンド回線が行きわたっていくという構図を見ていると、コミュニケーションの質という点で、新たな変化が生まれるに違いないと感じるようになっていた。前回述べた、二つの仮説のうち、2番目の「コミュニケーションの質の向上仮説」への確信である。 ISDN網の整備が進められていたとき、電話網のオールディジタル化が目指されたわけだが、ISDNの場合は様々の階層の通信機器によってインフラが構成されており、音声に対しては結局従来からの「300〜3.4kHz」という帯域の壁が存在していた。ISDNでも「高品位電話」という発想があり、開発も行われた。しかしながら「300〜3.4kHz」という帯域制約の壁を越えるには、伝送網のすべてを広帯域化しなければならないため、その壁は極めて高かった。 それに比べて、IP網のインフラは極めてシンプルな構成であり、音声の質を変えるためのハードルはぐんと低くなった。ネットワークがIP化の方向に進み出した今こそ、このIPの特性を生かして音質を向上させ、コミュニケーションの質を変えることができるはずである。 私達はIP網の潜在能力を引き出して利用することにより、従来の電話音質の壁を崩せるに違いないと確信するようになっていた。 広帯域のチップにピンとくる そのような考えを膨らませていた私達に、仮説の検証を一気に加速させるチャンスが訪れた。きっかけは、意外なところからもたらされた。宅内装置の開発完遂に向け苦楽をともにした、例の米国のデバイス・ベンダーからであった。そのベンダーの代理店の担当者から、あるミーティングの終了後、1枚のデータシートを手渡された。 「このようなチップがあるのですが…」 それは、広範囲の帯域を通すことのできる加入者回路を紹介するデータシートであった。 顔にこそ出さなかったが、私としては内心、ピンとくるものがあった。しかし当の代理店の担当者は、「これ、何かに使えませんか?」と、極めて控えめな態度である。 「これで実際に音を聞いたことありますか?」と私が聞くと、「いいえ、この広帯域での音を聞ける電話機がないので…」という答えが返ってきた。 このとき、頭をよぎったのは、ISDN時代に開発されたという「高品位電話」のことだった。いったん流行に乗らずに「駄目」の烙印を押された技術が、その後復活して日の目をみるということはあまりないというのが定説である。
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