今回の「極言暴論」のタイトルを見て、「何を言っているんだ。こいつ」と思った読者も多いはずだ。前回の記事では、「何でも屋」としてのSEがプロジェクトマネジャーの役割まで担うことの弊害を説いたはずなのに、舌の根も乾かぬうちに奇妙な主張をするとは(関連記事:技術者をプロジェクトマネジャーにするな)。私が読者でも、そう呆れてしまう。

 だが実は、同じ「何でも屋」でも、前回と今回の話では前提が違う。前回のような「何でも屋」としてのSEが活躍するのは、これまでのウォーターフォール型の開発プロジェクトの世界だ。いわゆる基幹系システム、つまりバックヤード、間接業務などの比較的要件がはっきりしているシステムをスクラッチで作るような従来型のシステム開発を想定している。

 一方、今回暴論しようと思う話は、ビジネス直結のシステム、つまり新ビジネスの創出やビジネスモデルの変革に取り組む際のシステム開発を前提にしている。厳密な要件定義は不可能で、アジャイル開発あるいはアジャイル的な開発が必要になる世界だ。ユーザー企業のIT部門やSIerが十分に取り組めていない領域である。

 前回は「何でも屋」としてのSEをシステム開発における「総合職(ゼネラリスト)」と定義したが、こちらの「何でも屋」は「フルスタックエンジニア」あるいは「バーサタイリスト」と呼ばれる技術者のことだ。そして、多くの企業でビジネス直結のシステムの重要性が増しているから、これから求められるのは「ゼネラリスト」ではなく「バーサタイリスト」としての技術者なのである。