浅野 尚 氏
1995年2月、日本ハウズイングに入社。マンション管理担当や支店長、人事グループ長などを経て、2009年7月より情報システム担当。基幹系システム構築の指揮を執る。現在はタブレットの展開、インフラコストの見直しなどを統括する。
(写真:中島正之)

 当社が目指す理想の事業像は、流通業で言うところの“プライベートブランド(PB)”のようなものだ。

 強いブランドや名前はなくとも、PBのように安くて、高品質なサービス。システム部門を統括する私としては、それをITを通じて実現したいと思っている。

 当社はマンション管理を手掛けている。住民で組織する管理組合に対して建物の保守点検サービスや、将来の補修のために住民が積み立てる「修繕積立金」の管理代行サービスなどを提供している。

 この業界では社名で管理会社を選ぶという顧客はあまりいない。そこで、ITによる業務の効率化で価格の面で顧客に魅力を訴求しつつ、これまでにない付加価値のあるサービスをITによって提供する。そんな将来像を思い描いている。

 例えば、ITを通じて顧客と直接つながり、修繕積立金の財務状況や収支の見通しなど、我々が自社の業務システムで管理している顧客に関する情報を、いつでもどこでも顧客にフィードバックできるようになれば、顧客にとっても便利だ。

 当社では2013年から、マンション管理組合の担当者にWindowsタブレットを配布している。1000台配布するのが目標で、現在は730台ほどになり、全国の支店に最低1台は置くことができた。こうした取り組みも、顧客にITを通じて少しでも詳細な情報をフィードバックしようという試みの一環だ。

 タブレットを使えば、顧客担当者は社外からでも業務システムに接続できるようにしてある。管理組合の理事会などで質問を受けた際、以前は会社に持ち帰らなければ回答できないこともあったが、今はその場で業務システムに接続し、詳細な回答ができるようになった。時間と距離を短縮するのがITの役割だと思っている。

 理想は、顧客が自分のマンションに関する情報をいつでも自分で直接確認できるようにすることだ。システム部門というのは、自社の業務の効率化やコスト削減ばかり考えがちだが、当社のようなサービス業の企業は、内向きな目線ではなく、常に顧客に何を提供できるかを考え続けなければいけない。