クラウドと同様、脚光を浴びている技術に「ビッグデータ」がある。また、インターネットに接続される各種デバイスが、センサーやカメラから大量のデータを送信し続けるという点では「IoT」(Internet of Things)もビッグデータと関連して語られることが多い。Red Hat Enterprise Linux 7(RHEL 7)には、ビッグデータに対応する機能も盛り込まれている。

 現在のスマートフォンを中心とするモバイルコンピューティングに加え、あらゆるものがインターネットに接続されるIoTの世界では、リレーショナルデータベースのような構造を持たない、いわば非構造化データの容量が爆発することが容易に推測できる。専用ハードウエアを用いたストレージは高性能・高機能な半面、大量の非構造化データを格納するにはコストが高すぎるだろう。

 Red Hat社が提供する、RHELベースのSoftware Defined Storageである「Red Hat Storage」(RHS)は、IAサーバーをスケールアウトさせることによってPB(ペタバイト)クラスのストレージを専用ストレージよりも低コストで構築可能である(図5)。RHSは「データ爆発」に対する効果的なソリューションとなると見られている。このRHSについて、説明する。

図5●ストレージのスケールアップとスケールアウト
図5●ストレージのスケールアップとスケールアウト
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デフォルトFSをext4からXFSに

 RHSはIAサーバーをスケールアウトして分散ストレージを構成する、分散ファイルシステムである。通常は数十~数百TBの内蔵ストレージを持つサーバーを1つのノードとして、4ノード以上で構成する。これは、同じファイルを2つのノードに保持して冗長性を確保するためであると同時に、複数のノードからデータを読み出して性能を高めるためだ。RHSを2ノードで構成すると、1ノードからしかデータを読み出せず、RHSの「性能もリニアにスケールする」という利点が生きなくなってしまう。

 RHEL 6のデフォルトのファイルシステムであるext4の場合、ファイルシステムのサイズが最大16TBに限られる。そのため、1つのノードに数十~数百TBの内蔵ストレージがある場合、RHEL 6でRHSを動かすには、XFSというファイルシステムを利用可能にするオプション製品の「Scalable File System Add-on」(RHEL 6をベースとするRHSには同梱されている)を用いる必要がある。

 RHEL 7では、デフォルトのファイルシステムがext4からXFSに変わった。XFSでサポートされるファイルシステムの最大容量は500TBであり、RHSのノードとして用いる場合に限らず、ビッグデータの処理で不可欠となる大容量のストレージを利用できる。

最後に

 RHEL 7の新機能については、ユーザーにとって必見のものがまだたくさんある。本特集でさわりを紹介したのは、その一端にとどまる。

 でも、ご安心を。引き続きRHEL 7の新機能について、仕組みを含めて連載していく予定である。ぜひ、次回の特集も閲覧いただき、ITインフラやシステムのあるべき姿に思いを馳せてみてほしい。そのヒントが多数詰まった連載となるよう、執筆していくつもりである。


藤田 稜(ふじた りょう)
レッドハット グローバルサービス本部 プラットフォームソリューション統括部 ソリューションアーキテクト部長
メインフレームでIT業界でのキャリアをスタートしたものの、途中で寄り道をしつつ、システムインテグレータからレッドハットに移って早9年。RHELのメジャーリリースは4から数えて4つ目となり、その進化の速さと安定性の向上に驚き続けている。6歳の息子と2歳の娘にコンピュータをどのように教えるか思案中。