パーソナルなホビー向けOSとして誕生したLinuxは当初、Webやメールといったインターネットのエッジ系サーバーのOSなどとして広まった。やがて、アプリケーションサーバーやデータベースサーバーをはじめとする基幹業務システムのサーバーOS、あるいはAndroid端末に代表されるモバイル機器などにも採用されるようになった。こうした「立身出世物語」については、皆さんもよくご存じのことと思う。

 今では携帯電話や組み込み系といった小型の機器から、CPUを数千個も連結して構築されるスーパーコンピュータのような大規模環境まで、Linuxが広く活用されている。IT業界に限らず、一般家庭や学校、社会基盤、産業界にとってLinuxは欠かせない存在になっている。

 一方で、利用方法という側面から見ると、Linuxと同時期に登場したインターネットが世界中を結び付け、コンピュータのみならず、モバイル機器や家電、自動車など多様な「モノ」が情報をやり取りする、IoT(Internet of Things)なとど呼ばれる世界が実現されつつある。利用形態やデバイスが変化すれば、サービスを提供するいわばインフラ側も変化する必要がある。変化に迅速かつ柔軟に対応するには新しい技術が必要になる、ということでインフラとしてクラウドコンピューティングが台頭してきたわけだ。

OSSから新技術が生まれている

 改めて説明するまでもなく、Linuxはオープンソースのソフトウエア(OSS)として開発されている。OSSのメリットの一つは、「ユーザーが欲しいものをユーザーが開発できる」ことにある。クラウドコンピューティングやIoTはもちろんのこと、分散データ処理基盤「Hadoop」を軸とするビッグデータ処理など、新しいテクノロジーやコンピューティングの潮流はOSSをベースとして生まれ、育っているのは当然のことといえるだろう。「ITにおける革新はOSSから始まる」というのが、現代の一般認識となっている。

 RHELもOSSで開発されおり、その例外ではない。UNIXからの移行先として十分な信頼性を持ち、スーパーコンピュータに利用できる高性能や、軍事システムにも採用され得る高いレベルのセキュリティ、そして性能が大きく向上したハードウエアリソースを効率よく活用できる仮想化など、ユーザーが必要とする要件や機能を常に満たすことで、LinuxサーバーOS市場において重要な地位を占めてきた。

 こうした時代の変化とともに、RHELがどのように進化してきたのかを簡単に紹介していく。RHELは初版の2.1(2002年3月リリース)や、それを改良したRHEL 3(2003年10月リリース)において、商用UNIXの代替として利用するのに必要十分な機能を持った。

 そして2.6系カーネルを初めて採用したRHEL 4(2005年2月リリース)で、利用できる論理CPUの数や物理メモリーの容量が大幅に増えた。x86_64を例にとると、RHEL 3では8CPU・128GBメモリーまでしか利用できなかったものが、RHEL 4では64CPU・256GBメモリー(理論値は1TB)まで利用可能になった。またRHEL 4はSELinux(Security Enhanced Linux)が導入された最初のバージョンであり、セキュアOSの一つとしてNATO軍を中心に軍用のOSとして採用が始まった。