1週間後の2014年7月14日、総務省は「変な人」の募集を開始する(関連記事)。「変な人」はあくまでも通称であり、ICT分野の研究者個人を支援する事業「異能vation(いのうべーしょん)」の対象者を指したものだ。

 総務省の資料から抜粋すると変な人とは次のような人を指す。「世界的に予測のつかないICT分野において、破壊的な地球規模の価値創造を生み出すために、大いなる可能性がある奇想天外でアンビシャスなICT技術課題に挑戦する人を支援。閉塞感を打破し、異色多様性を拓く」とある。

 実はこうした「Disruptive」な価値創造を以前から支援している国がある。イスラエルだ。イスラエル発としてよく知られているのが、ファイアウォールやVoIP(Voice over IP)、低消費電力CPUといったセキュリティや通信関連技術、半導体だが、今やそうした分野だけでなく、様々なIT関連技術・サービスを生み出す場となっている。

 イスラエルは国を挙げてスタートアップを支援。そうしたスタートアップのアイデアや技術、人を得るために、多くの企業がM&A(買収・合併)などを通してイスラエルに研究・開発拠点を置いている。

 そうしたIT企業をざっと挙げると、米IBMや米インテル、米マイクロソフト、米アップル、米グーグル、米フェイスブック、さらには韓国サムスン電子などきりがない。米アップルや米フェイスブックは現地のベンチャー企業を買収し、そこを足掛かりにイスラエルに研究・開発拠点を設立。その規模は大きくなる一方だという。

 先週1週間、日経コンピュータの特集記事のためイスラエルに取材に行き、破壊的イノベーションを生み続ける背景について現地のベンチャー企業や政府機関などの生の声を聞いた。詳細は日経コンピュータの記事に譲るが、誰もが共通して口にするのが、「失敗を恐れないこと」。

 総務省の「変な人」の募集にも、「ゴールへの道筋が明確になる価値ある『失敗』を奨励」と書かれている。「変な人」という言葉にどうしても注目が集まるが、最も重要なのは国の行政機関自らが明確に「失敗」について言及したことだと思っている。