「エンタープライズアジャイル」の導入に踏み切った、中部電力グループのシステム子会社であり、グループのIT部門としての役割を担う中電シーティーアイ(CTI)。同社は現場への導入を三つのステップで進めた。

 中電CTIは、どのようにしてエンタープライズアジャイルを現場に導入したのか。それを説明するためには、それまでの同社における保守開発のプロセスを理解する必要がある。エンタープライズアジャイルを導入する前の状況は以下のようなものだった。

以前はあいまいな仕様で開発していた

 まず、保守開発の依頼の仕方についてだ。依頼する場合、中部電力やグループ企業のシステム部門が、中電CTIの該当のシステム担当者にその内容を言い渡す。

 依頼の内容はごく簡単なものだった。簡単な改変であれば、数行しか書いていない仕様書で済ます場合もあった。中電CTIの担当者はその情報を基に、場合によっては“行間”を読んで、作業を進めた。

 ここでの問題は、「要求が本当に必要なのか」を吟味するプロセスがほとんどなかったことだ。「システムを新規に開発する場合であれば、要件定義の工程で要求の意義をきちんと検討・確認する。しかし、保守開発の場合は、そうしたプロセスを経ずに開発に着手してしまうケースが多かった」(中電CTIビジネスシステム部開発第1グループの大橋正敬リーダー)。

 しかも保守開発では、依頼を基に担当者が作業に取り掛かるものの、追加・変更したプログラムが実際にシステムに反映されるまでには相応の時間がかかった。システムの種類によるが、数週間~1カ月程度を要したという。