富士フイルムグループのシステム基盤を構築・運用している富士フイルムコンピューターシステム。同社の柴田英樹氏(システム事業部 ITインフラ部 部長、写真)は、「安さだけのプライベートクラウドでは、もはや利用部門のニーズを満たせない」と記者に話した。柴田氏は、仮想化による基幹システムのサーバー統合を他社に先駆けて2008年に実行。以後も富士フイルムグループのプライベートクラウドを運用し、強化してきた。

写真●富士フイルムコンピューターシステム システム事業部 ITインフラ部 部長 柴田英樹氏
写真●富士フイルムコンピューターシステム システム事業部 ITインフラ部 部長 柴田英樹氏
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 富士フイルムグループがプライベートクラウドを整備した当初の狙いは、サーバー統合によるコストの削減だった。柴田氏は稼働後もサーバー資源の割り当てを適宜見直すことによって、サーバーの追加購入や運用にかかるコストの上昇を抑えてきた。

 こうしたコスト面の工夫は現在も当然重要だが、「利用部門のニーズは安さだけではなくなった」と柴田氏は話す。新しいニーズが顕在化しており、プライベートクラウドは第2期に突入したと見る。その第2期のポイントを柴田氏は、牛丼チェーンのうたい文句にならって「早い、うまい、安い」と表現する。

 まず早いとは、「利用部門の目線で捉えた、システムを活用する際の総合的な早さ」(柴田氏)のこと。例えば利用申請手続きの標準化を推進し、利用部門の担当者がクラウドの利用を申請してから実際に利用できるまでにかかる期間を、当初より大幅に短縮したという。利用部門は、サーバーの処理性能の高さがもたらす「速さ」にも期待感を持っているが、それ以上にサーバーを使いたいときにすぐ使える、あるいは必要なくなった時点ですぐに止められるという「早さ」に高い期待を寄せているという。

 続いては、もう一つの新しいポイントであるうまいだ。これは利用部門が迷わずに自分の業務に最適な性能を選べるようにすることなどが該当するという。「一般的なITリテラシーの利用部門の担当者にとって、自部門の業務にサーバーなどの性能がどの程度必要なのか判断するのは難しい」(柴田氏)。そこで柴田氏はあらかじめ標準的な利用パターンをいくつか想定し、各パターンに応じた推奨性能をカタログ化するなどの工夫を凝らした。性能の選択に迷わずに済むため、申請して利用できるようになるまでの時間を短縮する効果も得られるという。

 では、こうした早い、うまい、安いの三拍子がそろったプライベートクラウドを、具体的にはどのように整備してきたのだろうか。「ITインフラ Summit 2014」では、その詳しい内容について柴田氏に語ってもらう。講演タイトルは「変化に強いプライベートクラウドの構築・運用の勘所」。柴田氏の取り組みに興味を持たれたあなたは、ぜひ足を運んでほしい。