IT部門が”儲かるシステム”の実現に貢献するには俊敏さと計画性を両立するシステム開発手法の採用が不可欠。その最有力候補が「エンタープライズアジャイル」だ。アジャイルが本格的な企業システムにも使える新手法へと生まれ変わった。エンタープライズアジャイルの導入に踏み切った、中電シーティーアイ(CTI)の事例を見てみよう。

 「多いときは1カ月で300本近くのプログラムを開発・変更する」。中部電力グループのシステム子会社であり、グループのIT部門としての役割を担う中電シーティーアイ(CTI)ビジネスシステム部開発第1グループの大橋正敬リーダーは、当然のように語る。

 中電CTIの主要な業務の一つが、発電所の工事案件の管理から資材調達、施工管理までを担う「営業・資材・工事管理総合システム」の開発・運用である。発電所の建設やメンテナンスを担当する、中部プラントサービスが利用している。

 ユーザーに相当する中部プラントサービスからは、システムに対する変更要求が頻繁に来る。「IT部門がビジネス変革の“抵抗勢力”になることは絶対に避ける」。大橋リーダー率いるチームはこうした信念のもと、俊敏にシステム変更要求に応える。重厚長大なインフラ産業のイメージはみじんもない。

開発要望を受け、メンバーの作業を即入れ替える
写真1 中部電力グループの中電シーティーアイの保守開発現場
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 システムの変更要求が来ると、大橋リーダーはすぐに7人のメンバーを集める(写真1)。変更要求の影響範囲や要件の整合性などをその場で洗い出す。「優先して対応すべき」と判断したら、メンバー全員の作業を即座に割り当て直す。柔軟に計画を修正して、必要な時期までに必要な工数を確保する。次の更新タイミングまで変更要求への対応を持ち越すのは言語道断だ。

 このようにユーザー要求に即応できる体制を整えているため、「ユーザーから変更要求があれば、毎日でも新機能をシステムに反映できる」と大橋リーダーは自信を見せる。