日本発のグローバル企業を本気で作ろうとしている「チーム藤森」。その一員として、ITで貢献するという仕事に魅力を感じて転身した小和瀬氏は、経営トップや現場との対話を重視している。

 CIOとしての説明責任を果たすため、経営トップとの対話を重ねる。5月29日には「POD(People&Organization Development)」と呼ぶ会議で、インターンシップ制度の導入や人材の部門別採用などシステム部門やシステム子会社の強化策について、藤森社長に提案し、深い議論を交わした。

 かといって、“仲良しこよし”の関係を築くのが目的ではない。「会うたびに藤森に叱られている」と苦笑する小和瀬氏だが、トップの助言を謙虚に受け止め、すぐさま行動に移す(以下、太字は小和瀬CIOの発言)。

LIXIL 執行役員 CIO兼IT推進本部本部長 小和瀬 浩之氏
LIXIL 執行役員 CIO兼IT推進本部本部長 小和瀬 浩之氏

 藤森から盛んに言われるのは、「とにかく現場とコミュニケーションを取れ」ということ。社内の利用部門や、LIXILの受発注システムを使っている取引先の方々と直接会って顔を覚えてもらえ、と。藤森からは、「私が現場で、『小和瀬を知っているか』と聞いて『知らない』と答えが返ってきたら、ただではおかない」と脅されている。

 L-Oneのような基幹系システムの刷新プロジェクトでは、どれだけ周囲の理解と協力を得られるかが成否の鍵を握る。小和瀬氏はLIXILに入社して日が浅く、社内人脈が豊富なわけではない。ここが花王時代と異なる点だ。

「誰?」は許されない、IT部内に専任広報

 周囲を巻き込むための情報発信の大切さ。このことを藤森氏の“叱責”から、改めて気づかされた小和瀬氏は、すぐさま手を打った。

 国内企業としては珍しく、システム部門内に専任の広報担当者を配置した。さらに、システム刷新プロジェクトに関するポータルサイトも開設し、L-Oneに関する情報を積極的に発信していく。L-One構築プロジェクトが本格化するのに先立って、「これから大きな変化がある」ことを全社員に周知徹底するための体制を整えたのだ。