SAP本社で“刺激”を受けた小和瀬氏は、4月14日からデュッセルドルフでのGMC初会合に参加した。「インフォメーション」チームの会議には、小和瀬氏のほか、中国地域、アジア地域、ペルマスティリーザ、グローエ、アメリカンスタンダードのCIOの総勢6人が集結した(写真)。

写真●独・デュッセルドルフで4月中旬に開かれたCIO会議の様子。右端が小和瀬CIO
写真●独・デュッセルドルフで4月中旬に開かれたCIO会議の様子。右端が小和瀬CIO
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 2日間で18時間かけ、各国のシステム概要や計画に関する詳細情報を共有。今後の方針も英語で議論した。

 日本のシステムは、海外のシステムに比べて出遅れている。例えばグローエのシステムには、日本や他国にも展開できそうな優れた機能がある。こうしたものを世界標準と定めて積極的に採用する。

 小和瀬氏は、「子会社のものだろうと、優れた機能は積極的に取り込む」という合理主義者。新システムのL-One構築では、ゼロから作るといった“無駄”な作業を極力回避する方針だ。

 そもそも、なぜLIXILがL-Oneの構築を急ぐのか。それは、同社がトステムやINAXなど5社を統合した企業体であり、基幹業務を支える仕組みを統一できていないからだ(以下、太字は小和瀬CIOの発言)。

「自分しかできない」、標準化は不可避

 グローバル経営を実現するためには、世界共通の情報基盤が不可欠。海外のエクセレントカンパニーの多くが情報インフラを標準化し、一体運営を実現している。

 新システムはまず、国内から動かす。だが、「One LIXIL」を掲げているのだから、最初からグローバルを意識して作るのは当然のことだ。容易なプロジェクトではないため、途中でつまずくことがあるだろう。でも、「自分でなければできない」と信じてやり抜く。

 企業が競争力を高めるには、魅力的な製品・サービスが必要なことは言うまでもない。だが「それだけでは世界で戦えない」というのが小和瀬氏の持論だ。

 「オペレーションの合理化と意思決定スピードを高めるための仕組み、つまり情報システムの優劣も競争力を大きく左右する」。こうした信念の下、小和瀬氏は“住み慣れた場所”を離れ、LIXILという新天地での一大プロジェクトに挑戦することを決めた。