IT業界における人材市場が活況を呈している。インテリジェンスが2014年6月16日に発表した調査によると、IT/通信系技術職の求人数は前月比1.5%増、前年同月比では43.1%増だった。転職求人倍率は2.63倍で、建築/土木系技術職の2.24倍を抑えて全職種でトップ()。「人材市場が活況だった2007~2008年と同じ水準」(インテリジェンスの安孫子健太キャリアディビジョン採用ソリューション統括部ゼネラルマネジャー)だという。

図●IT/通信系技術職の転職求人倍率の推移
図●IT/通信系技術職の転職求人倍率の推移(インテリジェンス調べ)
[画像のクリックで拡大表示]

中堅・中小SIerで逼迫

 旺盛な人材需要は、IT業界に深刻な技術者不足をもたらしつつある。IT投資の回復と大型プロジェクトの集中によって技術者が足りなくなる、いわゆる「2015年問題」が顕在化し始めた格好だ。既に2次請け、3次請けの中堅・中小のSIerは深刻なリソース不足に陥っており、大手に波及するのも時間の問題と見られる。

 約100人の技術者を抱えるA社の社長は、「技術者はフル稼働している。そのため、受託できないプロジェクトも多い」と漏らす。10人程度のB社社長も、「全員が客先に常駐している。先日、ある企業から好条件のプロジェクトを持ちかけられたが、やりたくてもできない状態だ」と話す。

 中堅・中小のSIerにおける技術者不足は、元請けとなるIT大手の証言からも明らかだ。

 野村総合研究所(NRI)でパートナー推進部長を務める郡山幸治氏は、「ここ1年、パートナーへの発注量は右肩上がり。過去最高水準になっている」と証言する。同社は300社のパートナー企業を抱え、ユーザー企業からの受託業務などを再委託している。NRIの受注量に比例する形で、パートナーへの発注量が増えている。

 NRIだけではない。富士通の松川達実ビジネスマネジメント本部シニアディレクターによると、同社パートナーのうち、「2013年度に稼働率が8割を下回った企業はなかった」という。SCSKの鳴尾秀樹業務改革グループパートナー推進部長は、「パートナー企業への業務委託費は前年度比で約15%増えた」と明かす。