IT部門の人が集まると必ず出てくる話題がある。「うちの社長はITが分からない」とか「社長がバカだから」といった類のボヤキで、それによって自社のシステムが出来損ないであることを言い訳し、IT予算や要員を削られ続けるIT部門の不遇を嘆く。

 もちろん、多額の投資したシステムが役に立っていないのなら、その責任は最終的には社長にある。これは誰も否定できない“正論”である。「IT部門が有効に機能できないのはIT部門の責任ではない。社長が悪いのだ」などと、その尻馬に乗った発言する識者もいるので、社長の耳に入る心配の無い限り、IT部門の人は大手を振って社長を痛罵できるのだ。

 だけど“サラリーマン・オーラ”を全開させて、一時のカタルシスに浸って何の足しになるのだろう、と私は思う。そもそも「社長は○○が分からない」というのは、スタッフ部門の人たち共通のボヤキだ。嘘だと思うのなら尋ねてみたらいい。「社長は法務が分からない」「社長は財務に関心が無い」など、信じられないような話をいくらでも聞けるだろう。

 社長が「ITが分からない」で済ましているのなら、「ITは当座の経営課題でない」と認識しているのだろう。そして、その認識は正しくないのなら、IT部門は社長に経営におけるITの重要性を説き、認識を改めてもらう必要がある。そうした努力をしないでぼやいているだけなら、社長だけでなくIT部門も悪いのである。

 さらに言えば、本当に社長が悪いのかと思う。ほとんどの企業では、社長は数年で交代する。だが、「うちの社長はITが分からない」とぼやく人は大概、随分前からずっとぼやき続けている。つまり、この企業の社長は、ITが分からないバカばかりということになる。でも、常識的に言ってそんなはずはない。やはりIT部門だけがバカなのである。