パソコンの普及と寄り添うように進化し、売れてきた周辺機器のひとつがプリンターだ。インクリボンを使うドットインパクトプリンターがインクジェットに代わり、写真画質を実現するなど、我々はプリンターの機能アップに心躍らせてきた。パソコン同様に暮らしを楽しくし、生産性を高めてきた機器の筆頭だ。

 ところが最近、どうも軸足がパソコンからずれてきた気がする。テレビのコマーシャルでも、スマホからの印刷を大きく打ち出している様子が見て取れる。パソコン一強の時代の終焉と共に、プリンターも踊り場に立っているのだろうか? 今回は、キヤノンマーケティングジャパンのマーケティング担当者にお話を伺うことができた。早速質問をぶつけていこう。

キヤノンマーケティングジャパン インクジェットマーケティング部 部長の岡崎哲人氏。(撮影:村田 和聡)
[画像のクリックで拡大表示]
キヤノンマーケティングジャパン インクジェットマーケティング第一課 課長の澤田創氏。(撮影:村田 和聡)
[画像のクリックで拡大表示]

1990年頃からの20年間ほどは、パソコンが順調に進化してきました。マイクロソフトが大きなシェアを保ち、アップルが少しのMacを売るという構図は概ね変わりませんでした。プリンターの開発も、この状況とシンクロしてきたと考えてよいのでしょうか? つまり、今のようにスマホやタブレット向けの製品を作るなど、思いもよらない時期がずっと続いてきましたか?

岡崎 インクジェットプリンターの市場は、パソコン市場の拡大に沿って伸びてきましたが、当時は画質や印刷速度などのプリンター本体の性能に加え、パソコンとの接続性の向上に力を入れていました。今日のように、パソコン以外の機器への対応を考えるとは想像もしていませんでした。

それまでに考えていたのは、異なるデバイスよりも「そろそろ接続はUSBだろう」とか「無線LANを採用しよう」ということですね。

澤田 そうですね。お客様の使い方やインフラの変化を見ながら、次のトレンドを考えて、サービスや商品を提供する時期がずっと続いてきたのです。

パソコン市場の変化によって、インクジェットプリンター市場にどのように変化が表れているでしょうか?

澤田 ここ10年ほどのプリンター市場は、ほぼ500万~550万台で推移しています。リーマンショックの後で一時落ち込みましたが、また盛り返してこの数字を堅持しています。大きな落ち込みもないのですが、大きな伸びもしておりません。

 我々の調査ですと、4~6年サイクルでの買い換えとなっており、2000万~2500万世帯が利用していると思われます。いわゆるコモディティ化が進んでいるので、これ以上の大きな伸びを達成するためには、技術、製品、サービス面で大きなイノベーションを起こす必要があります。

インクジェットプリンターの国内市場規模は、このところ500万~550万台で推移している。(キヤノンマーケティングジャパン調べ)
[画像のクリックで拡大表示]