1000億円以上の国費を投じ、世界に先駆けて2020年にエクサ級(1エクサFLOPS前後)のスパコンを日本で稼働させる――文部科学省と理化学研究所が推進するポスト「京」の開発計画に、黄信号が灯っている。有識者による検討次第では、計画をゼロベースで見直すことになりそうだ。ちなみにエクサは、テラの100万倍、ペタの1000倍を表す。

 国産のエクサ級スパコンの開発に向けて文科省は、複数の設計について実現可能性を検証するフィージビリティスタディ(FS)を、富士通、NEC、日立製作所、大学機関などに委託する形で2014年3月まで実施。2014年4月には、理研をエクサ級スパコンの開発主体に選定した。理研はFSの結果をレビューしたうえで、ハードウエア開発を担う企業を早々に選定するはずだった。

写真●富士通が開発する「Post-FX10(仮称)」のメイン基盤
写真●富士通が開発する「Post-FX10(仮称)」のメイン基盤
ドイツで開催したスパコン国際学会「ISC’14」で展示

 だが複数の関係者によれば、FSで検証した設計はいずれも、性能、総コスト、革新性、民間転用のビジネスモデルなどに難があり、計画の抜本的見直しが求められているという。京の商用版として富士通が開発した「PRIMEHPC FX10」の納入先が東京大学など一部に限られ、当初期待していた民間転用の効果が得られなかったことも、見直しに傾いている理由の一つだ。

 文科省は開発計画の抜本的な見直しに向け、有識者による非公開会議「次期フラッグシップシステムに係るシステム検討ワーキンググループ」を2014年6月に開催。夏までに一定の結論を出し、同年秋に総合科学技術・イノベーション会議にはかる計画だ。