持ち運びは難しかった「ラップトップ」の時代
1970年代後半に登場したパソコンを持ち運び可能にする試みは、早くからあった。例えば、米オズボーン・コンピューターは、キーボードとディスプレイ、本体を一体化した可搬型コンピューター「Osborne 1」を1981年に発売。ただし重さが10.7kgもあった。パソコンのフル機能が、持ち運びに適したサイズや形状になるには、さらに数年が必要だった。
1980年代前半には、画面を小型化した「ハンドヘルドコンピューター」がいくつか登場する。中でも、エプソン/諏訪精工舎(現セイコーエプソン)が1982年に発売した「HC-20」は約25万台を販売するヒット商品になった(図1)。一時はNECや米タンディ、キヤノン、ソード(現・東芝パソコンシステム)なども参入した(図2、図3)。
しかし、ハンドヘルドコンピューターは「プログラムを書ける人しか利用できず、一般ユーザーには広がらなかった」(エプソン販売取締役ビジネス営業本部長の斉藤章氏)ため、コンピューター好きの上級ユーザーが一通り購入すると、やがて姿を消した。
一般的なビジネスパーソンが移動先で文書作成や計算をする用途には、小型化と低価格化が進み始めたワープロ専用機の方が使われていた。