そろそろ、ユーザー企業のIT担当者も含めIT関連の技術者はロボットの本格普及期に向けての準備を始めたほうがよい。そう言うと、皆さんは奇異に思うだろうか。実は、この話は奇異でも何でもない。今ウエアラブル端末の普及が始まろうとしているが、そのウエアラブル端末の次に来る端末は、ロボットが最有力だからである。

 「ウエアラブル端末ですら海の物とも山の物ともつかないのに、ましてロボットなんか」と思う人もいるだろうが、既にGoogle Glassなどのウエアラブル端末では、国内でもコンビニや金融機関などが対応サービスの検討を開始している。そして今、次の“クラウド端末”として世界的に研究・開発、あるいはM&A(合併・買収)の焦点となっているのが人型ロボットなのだ。

 人型ロボットというと、ホンダのASIMOなど日本の研究・開発が世界をリードしており、今後は医療・介護分野などでの活用が期待されている。ところが最近、そうしたロボットの現状や将来像を大きく変えるような出来事が相次いだ。

 その引き金を引いたのは米グーグルだ。同社は2013年の年末に、東京大学発のベンチャー企業SCHAFTなどロボット関連企業7社を次々と買収した。派手なM&Aによってロボット事業に参入した形だが、その狙いは明らかだ。ロボット、特に人型ロボットは究極のクラウド端末、あるいはクラウドサービスのインタフェースになり得る。グーグルはそこに目を付けた。

 スマートフォンやタブレットの普及によって、多くの人がクラウドサービスを利用できるようになった。グーグルなどクラウド事業者にとっては、それだけ潜在顧客が増えたわけだが、スマホなどを使いこなせない人もまだ大勢いる。仮に一家に一台、人のように動き会話できるロボットが普及すれば、この課題は解決し、クラウド事業者はより多くの人を顧客にすることができるわけだ。

 つまりグーグルの参入をもって、人型ロボットの実用化に向けた競争軸が変化したと言える。人の作業を補助する機械から、人の作業も補助できる究極のクラウド端末へと、開発競争の焦点が移りつつあるのだ。ソフトバンクモバイルが6月に、人型ロボットの発売を表明したのも、こうした競争軸の変化を目ざとく捉えたものにほかならない。