今回も前回に続き、会社の老化現象の中で、ICT企業に共通に見られる現象のメカニズムを探っていきます。今回のキーワードは「品質」です。

 当然のことながら、他の業界と同様、あるいはそれ以上にICTの世界で重要視されるのが提供する商品やサービスの品質です。特に基幹システムやインフラに関しては、ひとたび障害が発生すれば顧客自身のみならず「顧客の顧客」にも多大な負の影響を与えます。時には社会問題になったり、トップの引責が問われたりと、企業にとってはまさに死活問題になる重要な課題と言えます。

成長度合いで異なる「品質」の意味合い

 したがって企業は成長から成熟の段階を経る過程でも、「品質」は常にトップの経営課題の一つです。ところがこの「品質」の意味合いが「若い成長過程の企業」と「成熟した大企業」では異なります。

 ここで重要な要素は、品質に対する「顧客の期待値」です。起業したばかりのベンチャーは、その企業の商品やサービスを選択する顧客の期待値も比較的「新しもの好き」の人が多く、他社にはない「尖った」品質を期待します。

 逆に言えば、多少のトラブルは大目に見てくれる場合もあります。ところが企業が成長し、それなりにブランドも確立されて「一流企業」になってくると、顧客の期待値は「トラブルが少なく、もし『何かあっても』組織として着実に対応してくれること」になってくるでしょう。