SAPジャパン テクノロジーソリューション部長 林幹人氏(写真:石川恵愛)
SAPジャパン テクノロジーソリューション部長 林幹人氏(写真:石川恵愛)
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 「リアルタイムビジネスを実現するカギは、プロジェクトの目的を強く意識し、ステークホルダー(関係者)のそれぞれが喜ぶ枠組みをデザインすること」。

 SAPジャパンの林幹人ソリューション&イノベーション統轄本部テクノロジーソリューション部長はこう指摘する。日本データマネジメントコンソーシアム(JDMC)が先頃開催したカンファレンス「データマネジメント2014」で、林氏は状況の変化に即応するリアルタイムビジネスの事例とそれを可能にするデータマネジメントの姿について述べた。

 実例の一つはカナダのモントリオール交通局である。交通局がスマートフォン用アプリケーションを用意し、交通機関の利用客に対して、交通情報と共に地域の買い物やイベント情報などを配信している。配信内容は利用客自身が設定できる。スマートフォンの位置情報に応じて変えることも可能だ。

 この仕組みにより、利用客は交通情報や店舗の情報を素早く入手できるようになった。小売業など沿線の会社は、利用客にタイムセールやキャンペーンの情報をタイミング良く発信していける。交通局は利用客の動向を把握でき、交通設備の改善につなげていく。

 モントリオール交通局は今後、利用客の動き、交通機関の状況、地域情報といった各種情報を組み合わせ、より細やかな情報を配信する計画を持っている。「データの精度が上がれば、より的確な情報配信が期待できる」(林氏)。

 こうしたリアルタイムビジネスの実現にあたっては、情報の収集先が多岐にわたるため、ステークホルダーが増え、それぞれの思惑に引きずられてプロジェクトが混乱する危険がある。それを防ぐために、目的意識を持ち、ステークホルダーを満足させる枠組みをデザインする必要がある。

 その手法および考え方の一つとして林氏はデザインシンキング(デザイン思考)が重要と指摘する。商品を生み出す活動に顧客や利用者を巻き込み、ステークホルダーの視点から商品やサービスを作っていくものだ。「情報システムの開発にも有効で、リアルタイムビジネスを具現化するシステムにこうした考え方を取り入れたい」(林氏)。

 リアルタイムビジネスを実現するには、各システムで発生するデータを素早く統合し、分析する基盤が欠かせない。モントリオール交通局はSAPが開発・販売するインメモリ型のデータベース製品「SAP HANA」を採用している。