この章では、海外に赴任するマネジャーレベルの人材育成について触れていきたいと思う。
このマネジャー層においては、若手の時の経験やスキルについては既に持っているという前提で本項を進めて行く。ただし、実際には、海外赴任時に初めてのこのポジションに着任するケースは少なくない。
マネジメントスキルの不足は深刻
伝統的な日本企業の場合、30代半ばでも役職に就いてないケースは多い。しかしながら、この年次で新興国に赴任となった場合、ほぼ間違いなく「なんとかマネジャー」という肩書きを持って赴任する。実際に現地では、部下をマネージすることが多い。
仮に日本で課長の肩書きを持っていたとしても、実際には部下を持っていないケースもままある。そんな彼らにとって、ただでさえ異国の環境や言葉に慣れない中で、名実共にマネジャーの役割をすることは、非常にハードルが高いと言える。
シンガポールでのアジア地域統括人事担当者へのインタビューでも、東南アジアに赴任する日本人マネジャーに欠落しがちな能力として一番強調していたのが、「日本人マネジャーのマネジメントスキル」だった。前述した通り、未経験の人間が慣れない環境で業務に取りかかるわけなので、これは当然とも言える。
さらに、一般的な日本国内の人材マネジメントの知識・スキルに加え、海外特有の人材マネジメントにも精通し、日本との違いを認識しておく必要がある。