問題の原因分析の経験が限られるメンバーは、なぜなぜ分析をしようと思っても勘所が分からず悩みやすい。そこで、TISの坂本一敬さん(産業事業本部 東日本産業事業部 東日本産業システム第1部 主査)らのチームではメンバーへの教育に力を入れている。

 坂本さんらのチームは、ERPによる基幹システムの保守開発を担当する。システム障害が発生したときのほか、障害につながりかねなかった「ヒヤリハット」の事態が発生した際も、なぜなぜ分析を行う。

 坂本さんらのチームはなぜなぜ分析を実施する際、まず定型フォーマットのなぜなぜ分析用シートを、障害またはヒヤリハットを起こした当事者のメンバーに配布する。各メンバーは1人で分析してシートに記入し、リーダーに送付する。

 シートを受け取ったリーダーは、記入内容で分かりにくいところや、もっと原因を掘り下げたほうがよいところの有無を確認。見つけた際には、青色の吹き出しを付けてポイントを記入し、メンバーに送り返す(図4の1)。

図4●メンバーの分析シートにコメントを記入しノウハウを伝える
図4●メンバーの分析シートにコメントを記入しノウハウを伝える
メンバーの分析シートに、リーダーがコメントを記入してノウハウを明確に伝えることで、メンバーの分析スキルが向上しやすくなるという
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 ここまで分析作業を進めてから、メンバーとリーダーが集まり、皆で議論する。準備の手間が掛かるようにも思えるが、「事前にシートをやり取りすることで、ゼロから議論するより論点の発散を防げる」(坂本さん)。

 議論ではシートの記述内容を詳しく確認する。「ステージング環境では問題が起こらなかったとありますが、それぞれの環境でソースコードを編集しているのですか」「ソースコードは修正しませんが、コメント欄は適宜修正します」といった具合である。こうしたやり取りを重ねて原因を掘り下げる。

 また、「認識が浅かった」などと個人の反省に留まる記述があるときは、チームとしての対策立案を促す(図4の2)。これらの議論を経緯が分かるように整理し、メンバーのなぜなぜ分析シートにすべて残している。

 再発防止策を導き出すだけなら、議論の経緯をシートに残さなくても問題ないだろう。坂本さんの狙いはメンバーの教育にある。「どんな記述に掘り下げを促したのかといった要点を理解してもらいたい」と坂本さんは語る。