オージス総研と宇部興産の共同出資会社、宇部情報システムの登根 浩さん(情報処理サービス部 コンサルタント)らのチームは、宇部興産のシステム部門から業務を受託し、業務システムの保守開発を担当する。

 登根さんらのチームは最近、ある業務システムの保守開発で障害を起こしてしまった。担当者がステージング環境の設定を本番環境に適用し、その影響で本番環境が正常に動作しなくなったのである。

 このような事態を防ぐには、担当者が設定作業をする前に、別の担当者が設定内容をチェックする、といった管理強化の対策がすぐに思いつく。しかし登根さんらは結論を急がなかった。代わりに、「なぜ」「なぜ」と繰り返して、問題の原因を掘り下げた。

 すると、意外な原因に突き当たった。登根さんらのチームは通常、作業用PCからリモートデスクトップ機能を使ってサーバーの設定作業を行う。この仕組みでは、本番環境とステージング環境を明確に区別できるように、作業用PCの画面に「ステージング環境」「本番環境」と表示する工夫をしている。ところが、一部のシステムはWebブラウザー経由でも設定できるようになっていた。このことは一部のメンバーだけが知っており、利用していた。

 さらにWebブラウザー経由の設定画面は、ステージング環境も本番環境も全く同じだった。ステージング環境と思い込んでいた担当者は、全く気付かずに本番環境の設定を変更した。

 この分析結果を得たことで、登根さんらのチームは、運用ルールを変える抜本的な対策を立てた。Webブラウザー経由の設定作業でも、ステージング環境か本番環境かを明確に区別できる表示を画面に盛り込むことにしたのである。

なぜなぜ分析を使う現場が増加中

 登根さんらのチームが原因を掘り下げるために利用した手法は、「なぜなぜ分析」と呼ばれる。その名の通り、現場で起こった問題の原因を「なぜ」「なぜ」と論理的かつ客観的に掘り下げ、隠れた根本原因を見つけ出す手法である。

 元々は製造業を中心に広がった手法だが、ITの現場でも浸透しつつある。特に最近2~3年で、本格的に活用する現場が増えている。