日系IT企業が進出を加速させているASEANの一部地域で、情勢不安が広がりつつある。ビジネス面でのリスクが懸念されるが、現地の様子を日系IT企業に聞いてみると、一部報道で受ける印象とはやや異なる実態が見えてきた。

写真1●2014年6月1日時点のバンコク市街の様子
写真1●2014年6月1日時点のバンコク市街の様子
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 政治的対立が続くタイでは2014年5月22日に、タイ陸軍のプラユット司令官が軍事クーデターを宣言(写真1)。同日、夜間外出禁止令を発令した。

 ベトナムでは中国との緊張が高まった5月中旬、南部の工業団地などで発生した反中デモが全土に拡大し、中国や台湾の企業などが襲撃を受けた。

 野村総合研究所タイは、クーデター発生から夜間外出禁止令が緩和された5月27日までの期間、従業員に定時での帰宅を指示。状況に応じて、在宅勤務を認めるといった措置を講じた。

 NTTコミュニケーションズ(タイ)も5月27日まで、残業を取り止めるようにした。反政府デモが活発化し、非常事態宣言が出された2014年1月から同社は、毎朝の出勤可否をシステムで報告するよう義務付けている。緊急時は、SMS(ショート・メッセージ・サービス)による連絡網を使えるようにしているほか、バンコク郊外のオペレーションセンターをオフィスとして利用可能にしている。