「1年前、グーグルから『ITインフラの選択肢を増やしたい』と話を持ちかけられたのが、POWERをオープン化するきっかけだった」。米IBMのPOWER関連事業を統括するゼネラル・マネージャーのダグ・バローグ氏はこう語った。

 「OpenPOWER Foundation」は、IBM、グーグル、エヌビディア(いずれも米国)など5社で2013年に設立した業界団体。その後韓国サムスン電子、日立製作所などを迎え入れ、2014年6月時点で加盟を23社に増やした。

写真●OpenPOWER Foundation会長を務める米グーグルのゴードン・マッキーン氏と、公開したPOWER8搭載マザーボード
写真●OpenPOWER Foundation会長を務める米グーグルのゴードン・マッキーン氏と、公開したPOWER8搭載マザーボード

 OpenPOWER Foundationが目指すのは、POWERを中心とする次世代データセンター向けインフラの開発と、POWERを中心としたエコシステムの形成だ。POWERは、Power Architectureをベースとしたマイクロプロセッサである。

 米IBMは、POWERの知的財産を加盟企業に提供。加盟社はその役割に応じ、POWERプロセッサを採用した独自サーバーや周辺チップ、さらにはPower Architectureを採用するプロセッサやSoC(system on a chip)を開発する。

 グーグルは2014年5月、最新プロセッサであるPOWER8を搭載したマザーボードを公開(写真)した。グーグルは現在、x86サーバー向けに開発した同社のソフトウエアをPOWERに移植し、性能を評価しているという。

 「POWERはメモリ帯域やメモリ容量が他のプロセッサより大きく、インメモリー分析など大量データの高速処理に優れる。x86プロセッサを全て置き換えられるとは思っていないが、次世代のデータセンターはx86とPOWERのハイブリッドになると考えている」(米IBMのバローグ氏)。

 なぜIBMは、利益率が高い垂直統合ビジネスの象徴であるPOWERのオープン化に踏み切ったのか。背景には、UNIXサーバー市場の縮小で新市場の開拓が求められていたことと、それを受けて進めているx86サーバーの売却を含めたIBMのイノベーション投資戦略がある。