まもなくITベンダーがユーザー企業の軍門に下る時が来る。どういう意味かと言うと、ユーザー企業がITベンダーの事業領域を侵食したり、ITベンダーを買収したりすることが当たり前の時代になるということだ。つまり、ユーザー企業の“IT企業化”が進み、既存のITベンダーの手ごわいライバルとなるのだ。

 「何をバカな事を言っているんだ」と呆れる人がいると思うので、まずは非常にシンプルな例を挙げておく。アマゾン・ドット・コムである。「なんだ、そんなことか」と逆にしらけられても困るので、さらに先回りして言っておく。IaaSサービスはアマゾンが覇権を取ったが、SaaSなどの業務系のITサービスもユーザー企業が主要プレーヤーになる可能性が高いのだ。

 “ネットの本屋さん”から小売業の巨人となったアマゾンは、システム面でもその巨大な調達力にモノを言わせて、IaaSサービスを破壊的な低料金で提供している。その結果、既存のITベンダーのITインフラ商売やシステム運用商売は、痛打を浴びることになった。

 このアマゾンの脅威に直面し、マイクロソフトやIBM、そして日本のコンピュータメーカー、さらにシステム運用を大きな生業とする日本のITサービス会社も、同様のIaaSサービスを相次いでリリースした。だが、IaaSは規模の経済が働くだけに採算を取るのは難しい。“猫も杓子も状態”の日本では特に厳しく、生き残りは困難を極めるだろう(関連記事:顧客のためにクラウドに取り組むIT企業の愚

 さて、ここからが本題である。クラウドなどの普及により日本のユーザー企業のビジネスも、IT化が急速に進んでいる。これにより、ITベンダーのSaaSやビッグデータ分析といった新規ビジネスと競合する可能性が出てきているのだ。このコラムは「暴論」なので、いつもは事例を書くのを控えているが、今回は事例を交えて論じてみたい。