前回まで「会社の老化」のメカニズムの二つのキーワード、「組織の不可逆性」と「資産のジレンマ」を基にした会社の「老化現象」について話してきましたが、引き続き数回にわたり、特にICT関連企業で見られる問題である不可逆性と老化現象について解説します。

 ICT企業によく見られる「会社の不可逆課程」の例として今回は「外注化」を取り上げます。会社の中の様々な事業は、当初は新規事業や新しい製品・サービスの導入など、「その会社にしかできない」付加価値の高い内容から始まります。

 この段階では仕事も日々「実験の連続」のような形で、非定型な「やわらかい」仕事を試行錯誤をしながら進めていくことになります。それが次第に軌道に乗り、特定の人にしかできない「属人的なもの」から、多数の人ができるように標準化され、定型度の増したルーチンワークのような「付加価値の低い仕事」となっていきます。

 一方で「量」の面でも拡大してきますから、「ヒト・モノ・カネ」といったリソースに限りがある場合には、必然的に関連会社やサプライヤーへの外注が進むようになっていきます。

短期的利益を考えれば理にかなっている外注化

 このように、会社の業務は一般的にいわゆる「ノンコア業務」から順番に外注化が進みます。この過程も基本的に後戻りのない一方通行の事象です。ICT業界での外注化と言えば、例えばシステムインテグレーション(SI)の仕事ではこれが顕著です。

 何重もの複雑な多層下請け構造で有名な建設業界になぞらえて「ITゼネコン」とも表現されるSI業界に関しては、大規模なシステムインテグレータ(SIer)の果たす役割は主契約者としてそこに関わる多数の会社や人員のマネジメントであって、実際にプログラミングしているのは関連会社や協力会社の場合がほとんどです。