リクルートの分析力を支えるのは、データサイエンティストだけではない。最新技術を取り込み、分析基盤を日々進化させていくエンジニアとの二人三脚が欠かせない。連載最終回では、分析を支える組織構造を見てみよう。

 挑戦、元気、若い─。リクルートと聞くと、誰もがこうしたイメージを抱く。1960年代に人材広告という新市場を切り開き、住宅や自動車、結婚など様々な分野で情報ビジネスを手がけ、連結売上高が1兆円を超える規模に成長を遂げた。

 日本を代表するベンチャー企業だが、それでも大企業病のリスクを抱える。情報誌からネットへと事業の軸足を移すなか、各業界で台頭するネット事業者との競争は激化するばかり。紙媒体での強みだった歴戦の営業部隊がコストアップ要因になることもある。

 2012年10月にはホールディングス制に移行し、各事業部門を分社して身軽な体制を作る。組織改革ばかりが注目されるが、本質は意識変革にある。パワフルな営業集団が、データに基づく頭脳集団に変貌することで、ビッグデータ時代の情報ビジネスでトップランナーを目指す。

 その象徴的な人材が「データサイエンティスト」。グループ内のIT活用をサポートするリクルートテクノロジーズが2009年前後から育成を始めた。グループ各社のネット事業で蓄積したデータを分析し、効果的に成功事例を生み出す。そこから分析手法を確立し、さらに横展開してグループとしてのシナジーを生み出す。こうして力任せではない、“大人の会社”になろうとしている。