リクルートテクノロジーズを中核に、グループ各社のデータサイエンティストが連携して分析に取り組むリクルート。多数のプロジェクトが同時並行で進むが、そのテーマは「見える化」と「予測」に大別できる。後者の代表的なプロジェクトとして、数理モデルを駆使した広告投資対効果予測の事例を取り上げる。

 リクルートは2012年から数理モデルを使って、「多様なネット広告の手段のうち、どれにどれだけコストをかけると集客効果が最も多く見込めるか」といった、ネット広告の投資効果予測に取り組んでいる。

 ネット広告には、検索サイトの結果表示ページの上位に配置する「リスティング広告」や、ウェブページの一部に画像や動画として表示される「ディスプレイ広告」など、様々な手法がある。

 従来は広告担当者の経験を基に広告費の配分を決定していた。実績を見て成果が出ていないと分かると、緊急で予算を追加して、てこ入れ策を講じるといった対応に追われることが少なくなかった。

 それを、数理モデルによる予測で先々を見通せるようにし、てこ入れに追われる状況を解消した。「緊急対策用に必要だった数千万円分の広告予算を削減できるようになった」と、数理モデルの開発を担当している、リクルートテクノロジーズ ITソリューション統括部ビッグデータ部ビッグデータ1グループの青柳憲治氏は効果を語る。

適用例が少ない予測手法を採用

 その予測で利用している数理モデルは「状態空間モデル」と呼ばれるもの。「広告手法Aによる投資効果」「広告手法Bによる投資効果」「景況指数」といった様々な要因を、データを基に洗い出し、足し合わせることで「全体の投資効果」を導き出す。「広告手法Aによる投資効果」などの要因はそれぞれ、「広告手法にかけるコスト」に「係数」と呼ぶ重みを掛け合わせて出す。