日立グループの日立健康保険組合は2014年10月から、ビッグデータを活用した保健指導の高度化に乗り出す(画面1)。

画面1●日立健康保険組合のトップページ
画面1●日立健康保険組合のトップページ
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 2014年4月、従業員約23万人の特定健診や診療報酬明細書(レセプト)のデータを一元管理する「保健事業計画・評価システム」を稼働させた。システムに蓄積したビッグデータを分析して、個人ごとの「疾病リスクスコア」を算出。重症化のリスクがある従業員を抽出して、本人の同意を得たうえで健康支援サービスを推奨したり、受診を促したりする。

 「特定健診とレセプトのデータを組み合わせることで、健康状態が悪いのに医師の診断を受けていない人などを把握できる」と、日立健保の根岸正治 保健事業推進課長は説明する。早期受診を促すことで重症化を抑制でき、医療費の適正化につなげられると期待する。

画面2●日立中央研究所が構築した「病態遷移モデル」のイメージ。糖尿病患者は青い線、高血圧症患者は赤い線をたどって、重症化していく
画面2●疾病リスクスコア算出に利用する、病態遷移のイメージ。糖尿病患者は青い線、高血圧症患者は赤い線をたどって、重症化していく
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 疾病リスクスコアを算出する際に活用するのが、日立製作所中央研究所が開発した「医療費予測モデル」である。特定健診やレセプトに記載された情報を基に、数年後の生活習慣病の発生確率や医療費を予測するモデルだ。

 「高血糖と脂質異常という特徴を持つ患者が、どのような推移で動脈硬化などに至り、医療費がかかるかを予測できる」と、中央研究所ライフサイエンス研究センタの長谷川泰隆研究員は話す(画面2)。日立健保が保有する2010年と2011年のデータ、約11万人分を使ってモデルの有効性を検証したところ、5%以内の誤差で生活習慣病の医療費総額を予測できたという。