「アパマンショップ」の名称で1000以上の賃貸住宅仲介店舗を展開する。収益性を高めるため、実店舗の業績データを分析し、店舗指導に生かす。注力しているのは、不動産ポータルサイトへの広告投資対効果の分析だ。20のポータルサイト個別に“成績”を把握し、交渉力を高めている。

 「不動産ビジネスは、情報化産業」。賃貸不動産の仲介・管理のフランチャイズチェーン(FC)である「アパマンショップ」を展開するアパマンショップホールディングス(以下、アパマン)の川森敬史常務取締役はこう話す。中核である賃貸マンションの斡旋事業では、顧客にとって魅力的な賃貸物件をいかに数多く取り揃え、その情報をタイムリーに提供できるかどうかが勝負になる。

 そこでアパマンはITシステムの整備とそこで蓄積したデータ分析に力を注ぎ、業績を堅調に伸ばしている。2012年10月から2013年6月期の斡旋事業の売上高は80億円8300万円(前年同期比12.6%増)、営業利益は14億3100万円(同13.3%増)だった。

「Webサイトの写真点数を2倍にしましょう」

 事業を支える基幹システムが、賃貸斡旋に必要な業務全般を支援する「AOS(アパマンショップオペレーションシステム)」だ。AOSに登録してある物件数は現在、約960万件。AOSは、顧客情報や、店舗ごとの営業実績、店舗スタッフの行動予定などのデータを管理している。それを基に、店舗での営業施策や、自社のWebサイトとバナー広告の運営方法を見直す。

 同社はAOSを使って、アパマンショップ1店舗ごとの成約率や収益性に関する実績データを日々、把握。業績が伸び悩む店舗を見つけ出すと、本部の担当者が店舗指導を実施する。結果の良しあしだけでなく、日ごろの店舗の取り組みにも目を光らせる。

●営業支援システム「AOS」を使って、店舗別の収益性や顧客動向をきめ細かく分析
●営業支援システム「AOS」を使って、店舗別の収益性や顧客動向をきめ細かく分析
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 このために外部のデータも駆使する。総務省が毎月発表する「人口移動報告」から引越しする人の増減傾向を把握。仮に移動者数が首都圏で10%増えたとしよう。それにもかかわらず、首都圏にあるアパマンショップへの問い合わせ件数の平均が10%を下回ることが分かったら、課題の把握と改善に動く。

 今や店舗にとって重要な顧客接点は、物件情報を提供するWebサイト。本部は、店舗ごとのWebサイト分析にも余念がない。「物件の写真点数やコメントの分量が多いWebサイトを運営している店舗は、成績が良い傾向がある」。FC加盟店への経営指導などを手がけるアパマンショップリーシングの原田忠臣店鋪運営指導課スーパーバイザーはこう話す。そこで伸び悩む店舗に対して、「物件写真の点数を2倍に増やし、コメントの分量も3倍に増やしましょう」など具体的に助言する。