ICT(情報通信技術)は劇的かつすさまじいスピードで私たちの生活を変化させています。本連載では、「破壊的イノベーション」(連続的かつ小規模の「漸進的イノベーション」と比較して、抜本的かつ既存のシステムを置き換えてしまうほどのインパクトを持ったイノベーション)としてのICTが会社などの組織と個人をどう変化させ、世界を不連続に変えていくのかについて考えていきます。

 単なる事象としての表面的な変化を議論するだけでなく、それが「なぜ」起こるのかというメカニズムや大きな流れを司る「構造」を解明することで、現状の課題をあぶり出し、将来起こるであろうことを予測するとともに、それらにICTがどのような形で貢献したり阻害要因となったりしていくのかについて考えて行きたいと思います。

 まず始めの数回では「会社の老化」について解説します。

 人と組織の構造変化を考える上では、会社という組織の制度疲労の現象とメカニズムを整理しておくことは欠かせません。環境変化や技術的なイノベーションは、必ず既存の仕組みを陳腐化させます。会社組織もその例外ではありません。

 特にICTに関連する業界や領域では、技術の進化が著しいために既存のシステムの制度疲労が急速に進展します。また同時に、このような長年の構造的な問題を不連続かつ抜本的な形で解決できる可能性を持ったものが、破壊的イノベーションとしてのICTなのです。

 本連載では「会社の老化」とはどういう現象のことを言い、それがどういうメカニズムで起こっているかについて明らかにした上でICTとの関連を考えていきます。

会社の老化とは?

 本稿でいう「会社の老化」とは、人間の場合と同様「成長期から成熟期を経たのちに必ず現れる衰え」のことです。ここでのポイントは、そうした事象は時間の経過による規模の拡大(成長)とともに、「不可逆的」に発生する事象だということで、一度その状態になったらよほどのことがなければ元に戻ることはありません。「成長」も不可逆的現象ですが、それがポジティブに働く場合が成長で、ネガティブに働くのが「老化」です。