本連載では、ビジネス文章力を向上させたい方のために、筆者がこれまで実務の現場で部下や後輩に教えてきたケースを紹介しながら、さまざまな文章スキル不足を「病」にたとえ、それを治療するというコンセプトで、スキルアップの具体的方法について解説します。

 第12回の治療は「企画通し力欠乏症」の治療です。仕事をしている人なら、仕事で思いついた新しいこと=企画を通して業務を改善していくことが求められます。ただし、これには上司、上長、関係部門の人、客先など、多くの人にアイデアを説明して説得する必要があります。

 しかし、会社に入りたてで未熟な頃は、企画を通すことはなかなかうまくできないものです。今日の患者さんも、そんな状況でした。

*     *     *

◆大野エミ子さん(仮名 22歳女性)の症状◆

芦屋:次の方、大野エミ子さん。今日はどうされましたか?

大野:お世話になります。あるSNSで話題になっていたのですが、このクリニックはビジネス文章治療で有名だとか。皆がコメントしていたので、今日は本郷まできちゃいました。

芦屋:ありがとうございます。それで、相談内容は?

大野:実は困ってます。私は、ITの企画をする立場にあります。アイデアを思いついて皆に説明するんですけど、皆が「説得力がない」って冷たく突き放すんです。上司も上長も、同僚も……。どうすればいいか、分からなくなってきちゃって……。なんか、もう嫌になっちゃって。きっと私に嫉妬してるんです。次から次へとアイデアを思いつくから……。