自分で文章を書くだけでなく、他人の文章を評価することで、分かりやすい日本語と分かりにくい日本語の違いを体感することができます。そこで今回は、いくつかの例文を紹介しましょう。今回紹介する例文は、いわゆる「悪文」と言われているものです。なぜ分かりにくいのかを分析してください。その後に、読みやすい文に直してみましょう。

医師による診察や治療のように評価する

 分かりづらい理由を分析する場合に次の点に留意してください。まず、どのようにそうなのかを把握するために「症状」をつかむ必要があります。これを医師を例をとってみましょう。

 体調を崩した人が医師を訪れます。医師はいきなり「病気は何ですか」とは問いません。血圧と体温を測り患者の様子を観察するでしょう。もしも咳が出るのなら咳止めを処方し、熱があるのなら解熱剤を処方し、鼻水がでるのなら鼻水止めを処方するような手当てをすれば、バケツいっぱいの薬を渡さなければなりません。しかしそれらの症状が感冒から来ていると原因を掴めば、風邪薬だけで済むではありませんか。

 従って問題を含んだ文章に接する場合には「症状」をつかみ、「原因」を特定し、「治療」を施す(訂正文を作る)という手順が必須なのです。それでは、次の例文を読んで、「症状」「原因」「治療」の手順を踏んでみてください。

<例文(その1)>
 新しい表計算ソフトウエアのアップデート・プログラムは、メーカーより今月末に提供されます。

<例文(その2)>
 エンターキーを押すと、ときどきコンピュータの内部でCPUの負荷が大きな処理を行っていることを意味する砂時計マークが表示されることがあります。

<例文(その3)>
 Windowsで動くソフトウエアには、ヘルプ画面が用意されています。例えば、ワードの場合には、メニューバーの一番右側に「ヘルプ(H)」と表示されています。ここをクリックすると、ヘルプ画面が表示され、左側に「目次」、「質問」、そして「キーワード」というタブ画面が表示されます。「質問」のタブ画面には、「何について調べますか」というメッセージと質問入力用のメッセージボックスがあります。ここには、日本語のまま、質問事項を文章で書くことができ、ヘルプ機能はその質問を解析して、最適な回答を提示します。このように最近のソフトウエアでは、あいまい検索機能を搭載したものが増えています。

 みなさんは、上記の悪文の症状、原因は分かりましたか。無事に治療はできましたか。