筆者の本業はプロマネ(プロジェクトマネジャ)ですが、ここ数年は本業をそっちのけにして、ソフトウエア開発に関わるSE(システムズエンジニア)とプロマネを対象に、文章作法の研修やセミナーを実施してきました。これまで研修で接した技術者は6000人、セミナーで接した人は4000人に及びます。

 延べ1万人に教えた経験から分かったのは、ソフトウエア開発に関わるSEとプロマネの文章力、すなわち言葉の力が訓練されていないということです。訓練には教材が必要です。そこでSEとプロマネが文章を書くうえで必要となる事柄を「SEとプロマネを極める 仕事が早くなる文章作法」(発行:日経BP社)にまとめました。その中でも特に基本的な事項、別の言い方をすれば、SE/プロマネは知っていて当然であろう文章作法を、本連載で紹介しましょう。

SE/プロマネの仕事の大半は「文章」の作成

 残念なことに「SEやプロマネのための文章作法」と聞いた途端、首をひねる人々がいます。疑問の一つは「なぜSEやプロマネに教えるのか」であり、もう一つは「大人の日本人に日本語を教える必要があるのか」というものです。

 最初の疑問について、まずお答えしましょう。筆者は「SEとは言葉を道具として使いこなす技術者である」と言って憚らないと考えています。ここでいう「言葉」とはプログラミング言語ではなく日本語そのものを指します。プロマネも同じで、両者に文章作法は不可欠なのです。

 ソフトウエア開発プロジェクトにおける成果物を思い浮かべてください。筆者の長年に渡る経験から言うと、全ての成果物に占める文章の量は7割に及びます。ソフトウエアそのものの量は全体の3割程度しかありません。参考のために「ソフトウエア関連工程一覧」を図1図2に示します。これを見れば明らかなようにソフトウエア関連工程は200工程以上あり、各々の工程に文章が伴うのです。

図1
図1●ソフトウエア関連工程一覧(その1)
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図2
図2●ソフトウエア関連工程一覧(その2)
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