客と売り手、どちらが“エライ”か。そう問われることがあったとしたら、私は躊躇なく売り手と答える。お客様は神様なら、売り手は神様よりエライ。こう書くと、「コラムが『極言暴論』だからと言って、無理やり屁理屈をこねなくてもいいのに」との声が聞こえてきそうだ。だったら「価値を生み出す者が尊い」と言い換えよう。少しは賛同してもらえるだろうか。

 大きく言えば、価値を生み出すことは社会に対する貢献である。被災地支援など尊い社会貢献は数あれど、ビジネスパーソンや企業においては、それぞれのビジネスの現場で他者に何らかの価値を提供することも大きな貢献だ。それにより正当な対価を受け取り、得た対価で他者が提供する別の価値を購入することで、経済を回し、社会全体をより豊かにしていけるからだ。

 だから、価値を生み出す者は尊い。それゆれに価値を受け取る側、つまり買い手は対価を払うだけでなく、時には感謝の言葉を口にする。実際、料亭で美味しい料理を食べた時、百貨店で素晴らしい接客を受けた時、支払いの際に「ご馳走様」「お世話様」と感謝して店を出る。それが客の品格でもあり、美しい商取引の文化でもある。

 もちろん売り手が提供する価値には高低がある。高い価値にはその分に見合う対価とともに、それに相応しく正しく尊重されなければならない。だが残念ながら、どんな素晴らしい価値に対しても、「カネを払ってやっているんだ」と傍若無人に振舞う客もいる。そしてどういうわけか、BtoCの商取引よりもBtoBの商取引のほうに、そうしたとんでもない客が多い。

 そう、ITベンダーとの商談でとんでもないことをやっているIT部門の担当者、あなたのことです。情報システムの開発、特にスクラッチ開発なら一品モノゆえに価値は極めて高い。だがソフトウエアが目に見えないためか、商談から開発まで至るところで、その傍若無人さが目に余る。価値を尊重し買い手として正しく振舞えない企業や人に、本当に価値あるものは提供されないことにそろそろ気付くべきである。